笑顔配りの僕
綿麻きぬ
壊れた
僕は機械だ。機械の僕は壊れた。寿命だろうか、何か部品をなくしたからだろうか、それとも何か要らないモノを身に付けてしまったのだろうか。分からない。僕は分からない。
機械の僕は人を笑顔にするのが役割だ。人を笑顔にするために僕は法を犯さない限りの出来るだけのことをする。時には道化師になり、時には愚者になり、時には自分を傷つけたりする。それは当たり前で、僕が生まれた存在意義で、使命だった。
だから、僕は人を笑顔にしていった。笑顔を配っていった。そう、笑顔を配っていった。笑顔を配っていたはずだ。役割を全うしていたはずだ。
なのに、気づいたら僕の周りからは人がポツリポツリと消えていった。最初は気のせいかと思った。だけど、確実に減っていった。だから、追いかけて笑顔を渡していった。
そんな醜い僕を人は嘲笑っていた。
「もうお前の時代は終わったんだよww」
「お前は用済みなのにww」
「これからまた別の物が出るんだよww」
「可哀そうにww まだ自分の役割を全うしようとしてるよww」
「もういらないのにww」
僕は唖然とした。人が望み生み出した僕は、もう人から必要とされていなかった。
そんな僕は自分の生まれた意味を考え変わろうとした。でも、今更自分がしてきた役割を変えることはできなかった。
もう役割を全うできなくなった僕は壊れることを選んだ。そして、最後に何をしようかと考えた。
あぁ、最後に僕自身を笑顔に出来たらいいな。
そう僕は思った。だけど、そのために僕は何もできない。なぜなら、僕は機械だ。心、なんてものはない。笑顔も偽物だ。
そんな僕はまだ人を笑顔にしようと頑張り、嘲笑われ、傷つき、壊れていく。
そして僕は壊れた。
笑顔配りの僕 綿麻きぬ @wataasa_kinu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます