破壊したモノ

綿麻きぬ

軽くなり、安心し、許された気がした

 夢を見た。誰にも話せない夢を見た。傍から見れば、話せる夢だろう。誰かに相談できる夢だろう。僕だけがこの夢を抱えなければいけない。だけど、このことを話させて欲しい。


 夢の内容はこうだ。自分の大事なモノを自分で壊した夢だ。凄く心が軽くなって、安心して、許されたような気がしてホッした。たった、それだけの夢だ。


 だけど、それは自分の居場所だったモノだ。心が安らぐモノだった。大事な友が出来たモノだった。大好きな思い出のモノだった。そして、一生守っていきたいと考えていたモノだった。


 そんなモノを僕は自分の手で壊して安心した夢だった。


 けれども、それは夢であって現実ではなかった。何も現実は変わっていなかった。夢であったことに安心した側面、現実じゃなかったことに絶望した。


 大事なモノを壊して得たあの安心感を夢で得た快感と現実で味わう恐怖に僕はどうすればよいか分からなくなってしまった。そんな状態になってしまった僕は理由を探した。


 僕が子どもだからこんな夢を見るのだろうか、それとも大人だから見るのだろうか。

 僕が天邪鬼だからこんな夢を見るのだろうか、それとも素直に生きているから見るのだろか。


 答えは分かっている。僕がきっとおかしいからだ。頭の狂った異常者だからだ。僕が蒔いた種だ。僕が育てた芽だ。僕が咲かせてしまった花だ。


 違う、違う、そんなの違う。


 僕は悪くない。救われたいだけだ。救いの手が欲しくて、誰かに救ってもらいたくて、差し伸べられそうな手を片端から掴もうとしただけだ。


 その結果、自分の大事なモノを壊す必要がでてきたのだった。結局、自分の所為だった。


 気付いた僕はモノを壊す。安心しながらも後悔するのを分かりながら。

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破壊したモノ 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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