第3話
夏の、朝の、一瞬の陶酔と煌めきが彼の脳内を汚していた。
満ち溢れた暑さの上澄みが交差し、あたかもそこら一体が夜かのように見せかけていた。
彼は今が夜だと勘違いしていた。
夜は瞬く間に彼の脳内を毒していた。
夜は考えることを放棄した。
夜が考え、この世界を作り替えようとしても無理なことでそれがディストピアではなく明白な現実であることを夜は知ってしまったのであった。
ーー夜が息を吹き返す·····そんなことは朝日の訪れ他にないのだが、夜にとって見れば朝日など現れることは無いのだ。
「今は夜ではありませんよ。夜はずっと深いのです。深くにいるからあなたには触れられない。あなたはまだ浅いのです。まだまだ夕日をみ続けなくてはなりません。だからまだ........」
素知らぬまだうぶ毛かちらほらと優しく見える少年は言いかけていた口をつぶさにつぐみ続けた。老人の息を待っていたかのように思えた。
「あなたは海です。誰よりも海なのです。
海岸線はまだいきています。」
彼にはそれが分からなかった。少年がだれであるかについても、海だの夜だののことについても、今起こっていることは彼の理知をおよそと超えるものであるから真理など求められるはずであった。しかし、彼はその答えを必死に求め続けた。
(なぜ人は如実に真理をもとめるのであろうか。)
真理というものは深紅の薔薇に過ぎぬ。『真理は真紅の薔薇だ』と言えばキチガイだと思われ、『真理は虚構だ』と言えばすなおに受け入れられて、あまつさえ私はその考えにひとつの尊敬さえ覚える。何故ならば虚構なんて花はどこにも存在していないのだから。
絢爛とここかしこ日は漏れ落ちたれど
題未定 @bbw_kun
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