スペラーニが想う、赤と緑の話。

綿菓子白夜

第1話

スペラーニは想う、過去とは何かと。

スペラーニは想う、未来とは何かと。


目の前で繰り広げられている口論。

それを眺めながら独り想う。


「だから、麺と言えば “うどん”!それは理解できるよね?」

「はぁ?麺と言えば “おそば”!常識でしょ?」


目の前で繰り広げられる口論。

何故、そうなったのか。

何故、こうなったのか。


「うどんの歴史を見れば、“うどん” が主流だと理解出来ると想うけど?」

「はっ、浅学乙、おそばの歴史は9000年!このニワカが!」


人はどこから来て、どこへ行くのか。

睨み合うが二人が、ぐるんっと此方に頭を向けた。


「兄貴は、“うどん” だよね!」

「お兄様は、“おそば” ですよね!」


二人は本当に仲良しなのだ。

余りに仲良し過ぎて、こうなってしまったのだろう。


汚れ無き眼が二対、キラキラと期待を膨らませている。

私が決断すべきは、うどん・そばでも、赤緑でもない。

……だろう、たぶん。


「すまない、二人とも、私は……」


「「私は?」」


「……麺といえば」


「「麺といえば?」」


「パスタかな」


私の言葉に世界が停止した。

二人の汚れ無き眼が白濁していくような錯覚に囚われた。


そして世界は動き出す。


「けっ、優柔不断の童貞やろうが!」

「そんなことだから、彼女なし歴24年なんですよ」


はて、私は何か罪を犯したのか。

はて、私は何か間違いを犯したのか。


「まーちゃん、私ね、うどんが好き、でもね、おそばも好きだよ」

「るーちゃん、私もね、おそば好きだけど、おうどんも良いと思うの」


二人は今まで啀み合っていたことが嘘の様な、愛らしい笑顔で見つめ合っている。

二人は本当に仲良しなのだ、仲良し過ぎて、衝突することもあるが、こうやってすぐ仲直りができる。


「行こう、るーちゃん!麺が伸びちゃうよ」

「うん、行こう、まーちゃん!急がないとね!」


二人は手を繋ぎ、歩いて行く。


「えっと……私のお昼ご飯は?」


微笑み合う二人が、ぐるんっと此方に頭を向けた。


「パスタ食ってろ童貞やろう!」

「草でもいいんじゃないかな」


二人は手を繋ぎ、歩いて行く。

とても仲良しそうに。


でも、5分はとっくに過ぎてると思うけどね……

私は声に出さずに彼女達を見送った。






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スペラーニが想う、赤と緑の話。 綿菓子白夜 @m10454

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