おまけ「赤い変身きつねさんと緑の変身たぬきさん」
小さな村の小さな神社に赤いきつねの神様と緑のたぬきの神様が住んでいました。
「たまには村におりてみるかな?」
緑のたぬきの神様はそう言うと神社のけいだいで育てているカシワの葉を一枚ちぎり頭の上にのせました。
「あーんちょっと待ってよたぬきくん、どんな格好に化けるの?」
赤いきつねの神様は慌てて同じくけいだいで育てているクズの葉を取って来ます。
「駄菓子屋行くつもりだから小学生が中学生くらいに化けようかと思ってるけど?」
緑のたぬきの神様はたまには人の世を見ておかないとなと、ふたはしらで分けて貯めていたお賽銭を持ち出します。
「中学生、中学生にして、デートよデートするのよたぬきくん!」
赤いきつねの神様は久しぶりのお出かけに小学生では「イチャイチャ」できぬと、せめて中学生に化けようと強く中学生を主張しました。
「了解、きつねさん」
そう言うと緑のたぬきの神様はカシワの葉を頭にのせたまま「くるり」と天を舞い漆黒の学ランを着た中学生男子に化けてみせた。
「キャー!、たれ目男子サイコー!! 涙ボクロ男子たまらん!!!! 漆黒の堕天使様来たーーーーーーーー!!!!!!!!」
赤いきつねの神様は緑のたぬきの神様の人の姿とその時だけ見える左目の下のホクロにおかしなテンションを示した。
「大丈夫? きつねさん……」
いやボクは毛並み深緑色のたぬきの神様だから漆黒の堕天使っておかしく無いか? そもそも日本の神社の神様として堕天使だとか宗教変わっちゃってるんだけど……と緑のたぬきの神様は正直思った。
「だ、大丈夫よ、たぬきくん、日本の神様は多神教でおおらかだから……」
自身が神様の赤いきつねの神様が言うのだからおおらかにも程がある。
「まっ、いいか、きつねさんもチャッチャと化けてよ」
緑のたぬきの神様は早く行こうと赤いきつねの神様を急かせる、緑のたぬきの神様も結構なおおらかさだ。
「オッケーたぬきくん♪」
そして赤いきつねの神様は頭にグズの葉を一枚のせるとけいだいで「くるくる」とバレイダンサーのようにターンをしながらセーラー服の女子中学生に「さらり」と化け、その長く赤い髪をポニーテールに結った。
「じゃ、行こうか」
緑のたぬきの神様は赤いきつねの神様に手を差し出しエスコートしようとする。
「ねえたぬきくん、なにか言うこと無いの?」
赤いきつねの神様は遠心力でスカートが「ふわり」となるよう回り、ポニーテールを肩から前にかけ整えからそう言った。
「かわいいよ、きつねさん」
緑のたぬきの神様は優しく微笑む。
そしてふたはしらの神様は手を繋ぎ長い長い村へとおりる石畳の階段を歩いて行き、その先にある小さな石の鳥居をくぐった。
神様にとってはたまのこと、人にとっては長い月日がたった頃の出来事である。
***
「……駄菓子屋がコンビニになっておられる」
緑のたぬきの神様はいつの間にかコンビニへと化けた元駄菓子屋の自動ドアに少しだけびびりながらも中に入って行った。
「た、たぬきくん、コンビニエンスストア初めて入ったわ……」
赤いきつねの神様は緑のたぬきの神様の影に隠れながらコンビニに入り、村の近代化にびびった。
「何買う? きつねさん」
緑のたぬきの神様は駄菓子屋に行くつもりだったので何かお菓子でも探そうかと思っていました。
「コレ買う♪」
赤いきつねの神様はいつの間にか緑のたぬきの神様から離れ他のお客さんの見よう見まねでコンビニのカゴを持つと、そのカゴの中にカップ麺のお揚げうどんと天ぷらそばを入れていました。
「お湯を注いで作るやつだねきつねさん、商品名が赤いきつねと緑のたぬき……」
赤いきつねの神様と緑のたぬきの神様はカゴの中にあるカップ麺の蓋の写ったお揚げうどんと天ぷらそばを見て「ぐーー」とお腹を鳴らしました。
「レジ袋は要りません♪」
「あっ、ポイントもいいです」
赤いきつねの神様がどこからか仕入れたであろうエコな発言をし、緑のたぬきの神様が「ポイントってなに」と首をかしげる赤いきつねの神様の代わりにポイントの話を店員さんにしました。
「たぬきくん、楽しかったねデート♪」
神社への帰り道、カップ麺を大事そうに両手で持ち満面の笑みをうかべて赤いきつねの神様は笑いました。
「コンビニでカップ麺買っただけで楽しいんだから、きつねさんは幸せの天才だね」
緑のたぬきの神様は赤いきつねの神様の満面笑みを見てとっても幸せな気持ちになりました。
そして小さな村のふたはしらの神様はすえながく幸せに暮らすのです、人の世がどんなに変わろうとも神様と人の世界を行き来しながらずっとずっと幸せに。
赤いきつねさんと緑のたぬきくん 山岡咲美 @sakumi
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- 帆多 丁いらっしゃいませ、ほた てい! です。 魔法と猫の近代ファンタジー「ヨゾラとひとつの空ゆけば」、右目を相棒とする化け猫娘の怪奇譚「化け猫ユエ」など、コツコツとやっておりますよ。 お気に召されましたら、ハートや星など頂けますと幸いです。 あ、でも読んだふりはやめてくださいね? 安い細工を目にすると、悲しくなるものなのですよ。 ではでは細かな作法もほどほどに、よろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。 ☆★☆★☆★☆★☆★ 作品紹介 兼 広告専用の置き場を作りました。 「作品紹介読むのといっしょに広告のクリック体験もできるのコーナー」 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891959815 (2019.10.29) ☆★☆★☆★☆★☆★ - ハートと星の運用について - わりと気軽に応援します。「読んだよ」という事を伝えるために使っています。 「おっ」と思えば星ひとつ 「おお」と思えば星ふたつ 「うお」と思えば星みっつ 今後はこんな感じで行こうかと(2018.03.14)。 完結していない作品は星二つまでにしています。 だって、完結まで読み切ったところで余韻にひたりながら「ポチっ」と行きたいではないですか。 (2018.03.27)
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