第11話

 私が魔法学校に入学してから一年がたった。特に大会に参加する等はしていない私だが私の友人達は参加する機会は多かったようでちょくちょく忙しそうにしていた。

 かく言う私は相変わらず図書室の主と化している。友人質は私の魔導技師としての腕を大変買ってくれているようで定期的に図書室に来てはM.A.Eの調整を始め助っ人から悩み相談まで幅広く行っています。


 学生である私たちにとってはリーズナブルな価格でM.A.Eの調整から作成まで行っていますがこれは誰にでもするわけではありません。紹介された人という事が分かるように合言葉を設けておりそれを本人から言わない限り行い徹底ぶりです。


 この魔法学校は午後の結構な時間を部活や委員会の時間が占めており全員が部活か委員会への所属を義務づけられています。


 今日も今日とてコーヒーを飲みながら図書委員の仕事を始めます。基本的にここに来る生徒は殆ど居ませんがここの地下は禁書を含む貴重書物の保管庫でも有りますのでその関係で教員や大学の教授がここに来ることがあります。

 どうやら今日はその珍しい来客がある日でした。下層エリアには私も一応図書委員という事で補佐という事で中島先生に付いていくことはあったので本当に少しですが内部を知っています。どうやらその事を知っている教員だったようで。


「君確か下層に一緒に付いて来てた子だよね?」


 美しいプラチナブロンドの髪が特徴的な先生はそう話しかけてきました。


「えぇ、ですが精々補佐で入出権限はありません」


「あぁ、いや。入出権限は私は持っているから良いんだが如何せん持ち出す予定の本が多くてね。君今暇かい?暇だよね?」


 少々押しの強い先生だな、と思いながらも返答します。


「そう言う事でしたら。それも図書委員の仕事ですから」


「うんうん、そう来なきゃね。というわけで着いて来たまえ」


 簡単に片付けを澄ませ受付カウンターの上に「所要につき離席」の看板を立てる。


 彼女に続いて重厚な扉のエレベーターを下りた先にあったのはそう広くない本棚の並ぶ場所

 下層と呼ばれる此処は貴重書物及び貴重なデータ置き場だがそう広いわけではない、とは言え上層の大量の書物と比べればですが。

 勿論この階層の中でも特に重要なものは更に奥に扉がありそこのデータサーバーに保管されているそうです。


「とりあえず…私はデータを拾ってくるから君は本をお願いね」


 そう言って渡されたタブレットには借りてくる予定の本のリストが記載されておりその数は10冊と確かに一人で運ぶには多かった。


「分かりました、ではそこのキャリーの上に置いておきますので」


 この下層エリアの本には全てに小型のマイクロチップとそれに同期したブックロック装置が付いています。

 よってマイクロチップは上層の本にも搭載されていますが。あちらが精々盗難防止程度の意味しか無いのに比べ、この階層のマイクロチップは一種の魔法装置であり場合によってそこら一体くらいなら巻き込む爆発を起こす模様。


 普通に本を探すなら併設されている総合端末で探すのですが。私は楽をします、目的の本を接続で見つけ出し誰も見ていないのを確認してから本を魔法で転移して積み重ねて終了。

 先生が帰ってくるのを待っているとやたらがっかりした表情の先生が帰って来た。


「お帰りなさい、先生」


「あぁ。うん、それがねー…保存用メモリー忘れた」


「あー…ご愁傷様です」


 下層エリアは基本的に一度出ればそう簡単に戻れないそうで。例え図書室管理者の中島先生でも数日は手続きに掛かるらしいです。


「どうしよう…発表会までそう日数ないのに」


 この世の終わりのような顔の美女が俯いてガタガタしているのを見て「これがいわゆる仕事ができるポンコツか」と内心思いつつ丁度M.A.Eのデータ保存用のメモリーを持っていたことを思い出し取り出す。


「先生、これは使えますか?」


 そう言うと涙目になっていた先生が顔を上げ保存用メモリーを見てパアッと笑顔になった


「使えるわ!」


「じゃあ、これを…「ありがとう!」貸すので…」


 言い切る前に私の手からもぎ取って行った彼女は私の話を最後まで聞かずに走り去っていった。


「私の作ったM.A.Eのデータ入っているので返してほしいんですけど…まぁ終わったら返ってくるかな?」


 一応全部家にクラウド経由でバックアップ随時取ってたので最悪いいんですが。やはり見られたら恥ずかしいものですから

 そう言えば名前聞いてない事に気づき帰って来たら聞こうと思い先生が帰ってくるのを待った。




 数分後帰って来た先生はさっきまで泣き叫んでいた人とは同一人物とは思えないほどしゃきっとしていた。


「本当にありがとう!」


「いえ、どうって事は無いですよ。先生あのお名前聞いていなかったのですが」


「え?あぁ、|東雲≪しののめ≫アリスだよ。一応この学校の学園長」


「では学園長戻りましょうか」


「あれ?リアクション薄」


「終業式や始業式の挨拶を思い出したのでお気になさらず。それとお貸しした記録メモリー終わったら返してくださいね?それと私の保存していた分は見ないでくださいね」


「はいはい。ていうか自分が通う学校の学園長の顔覚えて無いってどうなの?」


「別に興味なかったですし…」


「酷いなぁ」


 そんな話をしながらエレベーターに本を一人で抱えて乗り込む


「そう言う君の名前は?」


「名乗るほどの者でもないですよ」


「へぇ…言うねぇ。君みたいな特徴的な長い白髪の生徒が居れば気づくと思うんだけどなぁ。まぁ、良いでしょう」


 上層に戻り本を一先ずカウンターにおいてカートを持って来てそれの上にのせる。

 これ私必要でした?っと言おうとして居なかったらこの人記録メモリー無かったなと思い出し言うのをやめる。


「何か言おうとしてやめたようだけど遠慮しなくていいのよ?」


「いえ、やめておきます」


「そう?」


「カートに本を置いておきますので好きに持って行って下さい」


「えー…運んでよ。どうせ暇でしょ?」


「…分かりました」


 そう言われ反論できない為黙ってカートを押し始める。


「よろしい」


 カートを押し図書室を出たところで立夏とばったり出くわす


「あつ、丁度よかった。いつもの…」


 人差し指を口に当てジェスチャーで用事がある事を示すと察してくれた。


「OK!何時もの場所で会おう」


「ごめんなさい。その話もその時に」


 後ろで一連の流れを見ていた学園長が怪訝な顔をする。


「あの子1―Eの西宮立夏ちゃんでしょう?射撃部の新入生エースだったけど仲が良いのね」


「そうですね」


「1年生の中でも隠れた逸材とねぇ…」


「別に問題は無いと思いますが」


「まぁね…」



 そのまま学園長室に書物を運び終えたところで下校のチャイムが鳴る。

 学園長室は図書室からそこそこ距離があり徒歩で帰るには時間がかかるなと思い転移で戻ることになるなと思いため息をつく。


「ごめんね!記録メモリーの兼も併せて今度お礼するから!」


「お気になさらず。メモリー…返してくださいね」


「流石にカリパクはしないよ」


「では、これで」


 適当な場所までカートを押し、人目がなくなったのを確認してから転移で図書室に戻った。


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いつもお世話になっております

作者です超適当に世界観作った拙作をお読み頂きありがとうございます。

しばらくはもう一作のアーセナルウォーカーに集中します。

あちらは結構気合い入れて書いてます。

こちらは結構気分転換位の気持ちで書いたので続きは有りますが載せるかは不定期です

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Grievous Witches アルニクツエル @arunikutsueru

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