第11話
「じゃあ、とりあえずお疲れ〜」
いつの間にか、お互いの手にはグラス。何に対してのお疲れなのかわからないままとりあえず口をつける。
「乾杯なんて言葉、誰が考えたんだろうな、アホらしい。」
「ああ、盃(杯)を乾かしてからにするって意味のことでしょ?それ自分が教えてあげたんじゃん。」
確かそうだったな、と相手に聞こえないくらい小さな声でグラスに向けてつぶやいた後一気に流し込む。なぜか、大きな苦味と腐ったパンのような香りが鼻を突き抜けた。一気に昔男友達と飲み明かした記憶が蘇る。ゲロと共に目や鼻から吹き出したあの匂いだ。次は別の酒を頼もう。
「でだよ、せっかくわざわざ二人になってさあ、僕の何を調べたいのさ。」
「あ?」
気持ちの悪さと素っ頓狂な質問から変ねトーンで声が出た。
「誘ってきたの、おま..」
「それはそうとしてもさ、今回は引き受けたってことは逆に僕に用があったんだろ?」
見透かされていた。いつもこいつの誘いは無視し続けていたのだが、なぜか今回だけ引き受けた。
「まあ調べるっていうのは冗談にしろ、何か僕に杖得たいことがあるんじゃないかい?」
両手の上に顎を乗せ、上目遣いでこちらを覗き込んでる姿は蛇を睨むカエルに等しかった。
「もういっぱい付き合ったらな。」
そう言って、手をあげて店員を呼んだ。
惰性 また冬 @tsubakisaki
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