第11話
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「ゼスさん!」
目が覚めると目の前に琴美の顔があった。
周りをみるとどうやら俺の自宅みたいだ。
まだ頭が回っていないのでぼんやりしている。
「琴美が何で俺の部屋にいるんだ?」
「お前を見つけた後にお前を診ていると聞かなくてな。私と一緒に見舞いに来た」
がちゃりと扉が開き、見るとテミスさんが入って来た。
「てか俺どうなったんだ?」
俺の記憶を辿ってもどうして自宅にいるのかわからない。
「街で倒れている所をエギールさんが見つけてここまで連れて来てくれたんだ。それで私に連絡をくれてな。君の応急手当てもしてくれていたよ。彼は仕事があるからともう行ってしまったよ」
エギールがここまで運んでくれたのか。今度お礼を言わないとな。
ただお礼は体で払ってとか言われそうで怖い。
「琴美が逃げれて良かったよ」
俺のベッドに頭を埋めている琴美の頭を撫でる。
自身の体の様子を確認する。
痛みはあるが、重傷ではないようだ。骨が折れているわけでもない。
「ゼス、琴美と別れた後どうなったんだ?」
「それがわかりません。あまり覚えていないんで」
「覚えていないか・・・敵の容姿などはわかるか?」
「一瞬見たような気もするんですが、すいません、思い出せません」
「そうか」
「でもわかったこともあります。奴は女です」
体の使い方からして間違いない。
「わかった。少ない手がかりだが色々探してみよう」
手がかりは少ないが、事件の犯人につながることだ。なんとかして探し当ててもらいたい。
「テミスさん、それで俺の処分はどうなりました?」
勇者を無断で連れ出して、危険な目にあわせたんだ。十分な罰が下るだろう。
「一ヶ月自宅謹慎処分だ」
「え、それだけですか?」
てっきりクビだと思っていた。
「クビでもおかしくなかったが、琴美の口添えがあったからな」
なるほど。それで助かったのか。
「琴美、助かった」
琴美は顔を見上げた。
「元はと言えば私のわがままが原因です」
「それはそうかもしれんが、なんにせよ助かった」
クビとなってはテミスさんに合わせる顔がなかったからな。
「ゼスさん、私強くなります」
「まぁそうなってもらわないと困る」
「強くなってあいつを倒します。ゼスさんとガットさんの仇を取ります」
俺は死んでないけどな。
結果的に琴美がやる気を出すようになったのは良かった。
俺はあいつとの戦闘を思い返すが全くもって敵わなかった。
幸いだったのがナイフに毒が塗られていなかったことだ。毒があったことは考えたくないな。
でもほんとうに俺はどうやってあの窮地を乗り越えることができたんだ?
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(side ???)
何だったんだあの男
私は全身の痛みをこらえ歩く。
私の実力なら数分もかからずに殺せることはできたはず。
だが結果はこのありさまだ。
私は全身を見る。
灰色だったはずのローブが所々赤黒く染まっている。
あの男の返り血も含まれているんだろうがほぼ私の血。
利き腕である右腕はナイフで刺されほぼ動かない。
私は生まれつき回復力が普通の人より高いので、数日もすれば傷は癒えてくれる。
けど痛いものは痛い。
歩いていると、路地から人が来た。
私の主人だ。
「お前がそれほど傷を負うとは、手練れだったのか」
「はい」
「そうか」
私に聞いたものの主人はあまり興味がないようだ。
「それより首はどうした?」
「あっ、置いてきてしまいました」
男の拳が目の前にあった。
「うっっ!!」
私の体は路地の壁に叩きつけられた。
「この失態か」
「っっすいません」
「お前みたいなやつの面倒を見てやっているんだ。次失敗したらわかっているな」
「はい・・・申し訳ありません。今から回収してきます」
私がそう言うと主人は闇の中へと消えていった。
はやく回収しなければ・・・・・を助けるために!!!
一般城兵の勇者観察日記~ 岡島冬馬 @mmmmmmf
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