マルグの決意
朝、自然と目覚める。
少し前まではかーちゃんに怒鳴り起こされたのに、今ではいつもの時間に目覚められるようになった。
寝台から出ると、かーちゃんととーちゃんはもう起きており、食事の用意や仕事の用意をしていた。
「おはよー」
二人に挨拶する。これもいつの間にかできるようになってんな。
「ああ、おはよう」
「おはよう」
そのまま家を出て井戸に向かった。
巨人の村では井戸を皆で一緒に使っている。人間より何倍も大きいからいくつも井戸を掘れないそうだ。
たまに雨が降らないときは水不足になって大変になることがあるらしい。おれはまだ経験したことがないから知らないけど。
早起きな大人はもう済ませているようで井戸には誰もいない。さっさと顔と歯を磨いて家に戻った。
「かーちゃん。館にいくね!」
朝食を食ったらすぐに用意して出かけようとしたらとーちゃんに首根っこをつかまれてしまった。
「なんだよ?」
「今日、会合があるからルルの面倒を見てくれ」
えー! と文句を言っても拳骨が返ってくるのは知っているので、さっさと諦めることにする。かーちゃん、怒らせると怖いし……。
「ミミ。館にいくぞ」
妹のミミは無口だ。たまに相手してやるけど、大人しい性格であり、一人遊びばかりしているんだよな。
手を繋いで館に向かうと、馬車がいっぱい停まっていた。
「なんかあったの?」
村のおばちゃんがいたので訊いてみた。
「必要なものを街から運んできたみたいだよ」
じゃあ、忙しいか。
おれも手伝おうかと思ったけど、おれにできることもなさそうなので離れに向かった。
「忙しそうだし、離れにいくか」
館はまだ作りかけで、巨人の大人たちもいる。怒られたくないので離れに向かった。
「ミリエル、おはよー」
離れの前で動く椅子に座ったミリエルがいた。散歩かな?
「おはよう。ビシャとメビなら中にいるわよ」
と、ビシャとメビが出てきた。
「お、ミミじゃん。珍しいね」
二人がミミに飛びついた。
ミミの半分もない二人が飛びつくが、ミミはびくともしない。まだ四歳でも巨人は巨人。力はあるのだ。
「ねぇ、ミミと遊んでやってよ。おれ、スリングショットの練習したいからさ」
狡いけど、ミミのことを二人にお願いしてみた。
「いいよ。タカトから体を鍛えろって言われてるし」
「よし、ミミ。散歩にいくよ!」
完全にミミを馬扱いしているメビだけど、ミミはそれほど嫌がってない。たぶん、ミミは二人を小さな獣と思っているんじゃないか? 師匠からもらった獣のヌイグルミを大切にしているから……。
散歩に出かけた三人を見送り、離れから的を出した。
「マルグは熱心ね」
「おれはまだまだ子供だからね」
ゴブリン駆除に連れてってもらってよくわかった。おれはまだまだ子供だって。弱いって。まだ師匠に連れてってもらうには早かったんだってな。
「もっとスリングショットを練習して、体力をつけて、師匠みたいになるんだ!」
巨人が冒険者になるのは難しいって言われたけど、師匠はそれを応援してくれた。なら、なるしかないじゃないか! おれは巨人初の金印冒険者になってやる!
「それならゴブリン駆除請負員になっていたほうがいいんじゃない。ゴブリンを駆除したら武器も食料も買えるからね」
と、ミリエルがそんなことを言った。おれがゴブリン駆除請負員?
「……まだ子供なのに、ならしてくれるかな……?」
まだおれは見習い。村の周りしか出ちゃダメなのに。
「まずは両親から許しをもらいなさい。両親が認めてくれたらタカトさんも許してくれるわ」
「かーちゃんととーちゃん、許してくれるかな?」
「そこはマルグの本気次第よ。本気でなりたいなら本気でお願いしなさい。ゴルグさんもロミーさんもわからず屋じゃないわ。マルグが本気とわかれば許してくれるわよ」
……ほ、本気、か……。
「──うん! おれ、本気でお願いしてみる! 絶対、師匠に誇れる冒険者になる!」
決めた。おれは絶対、冒険者になってやる!
ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく! 1 タカハシあん @antakahasi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます