一悶着あってからの一悶着。
王道に沿った物語かと思えば、読み進めていくうちに筋道はミステリーのような様相を呈していき……。ファンタジーでありながらもそれだけでは終わらない、良い意味で複雑な展開が醍醐味の作品です。張り巡らされた伏線の数々に、様々な人物の心情と陰謀。知らない間に物語に熱中してしまう感覚を何度味わったことかわかりません。
謎が謎を呼ぶ重厚な物語、そして骨子を支える登場人物たちも目が離せないところ。たのもしい仲間たちに、謎を解くカギとなる魅力的な人物たち。大人の会話もあれば、微笑ましい掛け合いも。登場人物たちの生き生きとした描写の数々は、字を追っているだけでも読者を作中世界に連れて行ってくれる力があります。
知っている人ならニヤッとできる小ネタや固有名詞のモチーフを含めて、細部まで意識の向けられた作品となっています。もちろん、そうした予備知識がなくとも楽しめる内容になっているので、気になった方はまず読んでみてください。ファンタジーがお好きな方、変わり種を探している方ならば押さえておきたい一作です。