第64話

 その日も、夢を見た。


 男の子が立ち尽くしている。名前知らない男の子。道満に身体を乗っ取られた、男の子。


「……あ、お姉さん」


 パッと顔を輝かせる彼が、凛々花に駆け寄ってきた。


「もう会えないかと思った!」

「な、なんで」


 保也に呪をかけてもらったのに、と言いかけて、男の子がきょとんとしていることに気づいた。


「どうしたの?」

「……ううん、なんでもないよ」


 道満の気配は感じられない。というか、わからない。この場所は、独特の雰囲気に満ちている。


「お姉さん、何かお話ししようよ」

「……うん、そうだね」


 二人の前に椅子が現れた。まるで、誰かに見られていて、その誰かが出現させたような。

 きっと道満だろうなとは思う。けれど、この夢から醒める術を、凛々花は知らない。


「お姉さんの好きなものは何?」

「お洋服が好きだよ」

「そうなんだ! 可愛い服着てるもんね」


 そう言われて初めて、凛々花は自分の着ている服に視線を落とした。

 大きなリボンの着いた白いブラウスに、黒いチェックのミニスカート。実家に着物を置きに行った時と同じ服。


「……うん、服を作るのも好きなんだ」

「お姉さん、洋服作れるの? すごいね!」


 男の子が笑う。それに釣られて微笑んだ時、肩に暖かいものが触れた。


「———そこまでだよ」


 保也の声。


 その声で、まるでテレビが切れるかのように意識が消えた。


 最後に見えた男の子は、邪悪な顔をしていた。

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星への道 折上莢 @o_ri_ga_mi_

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