第20話 勢力の闇
――翌朝
俺は一人でギルドに向かった。より詳しい話をする可能性もあるからだ。状況によっては、俺対勢力幹部の構図になってしまうかもしれない。
もしその時がきたらチームを抜けよう、エミリーたちには迷惑をかけれない。俺個人の問題でもあるしな……。
俺はギルドに着くと、さっそくシャナに声をかける。
「シャナさん。ダリルはいますか?」
「ちょうどいますよ。何か御用ですか?」
「重大な情報だ。他には聞かせられない。可能なら今すぐ面会を頼みたい」
「わかりました。取次ます。少々お待ちを……」
よかった。運よくタイミングもよく話ができそうだ。5分も経たないうちに、シャナより案内を受ける。
ギルドマスター部屋のソファーにどっしりと腰を構えて座っていた。
「キセラから用とは珍しいな。なんだ? 重大な情報って?」
「いきなりですまない。先に他言無用で願いたい」
「お? おう。キセラの場合は、ほとんどがその話だからな。んでなんだ?」
「先にキーワードをいう。知らなければ、話は終わりだ」
「随分とまた、限定的だな?」
「すまない。ことがことでさ。”神界”・”シェイプシフター”・”虹族”この言葉に聞き覚えはあるか?」
この時、ダリルの表情が隠そうともせず一気に表情が変わる。
「キセラ、腹の探り合いをするつもりはない。今の言葉で知らない物は、何一つもないのが答えだ」
「わかった」
「さらに大雑ぱにいうとな、シェイプシフターとは争う準備をしている。虹族はパー勢力の守護神であり神界に住んでいる。そんなところだ」
「そうか、助かる。実はな……」
俺は昨日の勢力幹部でのできごとと、四人のシェイプシフターの処遇を相談した。銀の弾丸だけはふせている。ダリルは、俺の説明に補完する形で、この勢力の闇の部分を話てくれた。他には、勢力にすでにその人数がいるならば、恐らくは半数はやられている可能性を示唆していた。
やはりシェイプシフターは、今ある三つの勢力以外で、第四の勢力と考えても良さそうだ。
ここまで深く入り込まれても、大きな問題が起きない理由は、基本的に他勢力に与しないことが大きい。他の勢力にいるシェイプシフターたちは、それぞれ腰を落ち着けた勢力別で争っている。そのことから、対勢力の力関係でいうと、共通の敵がほとんどなため、共同戦線を貼ることが多いと聞く。ただし、問題も多い。その問題は当たり前に、彼らの利益が優先されることだ。
気になることは、”アレを必ずやる”とは何なのか……。
指し示す物がこの勢力もしくは、俺たちに影響するなら、選択は誤らないようにしたい。とはいえ、答えの半分は決まっている。勢力幹部が俺たちに手出しするなら、殲滅だ。
このままでいくと、おそらく内紛に近い形で、ギルドと勢力幹部は争うことになる。そこで、シェイプシフターの殲滅準備で実は、ギルドマスターが不在にしていたのだ。殲滅理由は当然、シェイプシフターによる勢力乗っ取りが事実上起きているからだ。
かなり込み入った事情で、ギルド内にも潜んでいることも鑑みて、あえてニセの突拍子もない行動を普段から示している。このことから、探られても回避可能にしているとのことだ。加えて、準備は間もなく終わる。
新たにわかったことは、表向き放浪癖のあるギルドマスターを演じているだけのようだ。シェイプシフターにはただならぬ思いがあるそうで、心の内は知る由もない。
もうふたつ目は、虹族はパー勢力の守護神だという。他に神界のことも知っていて、他にもチョキ勢力の妖精族やグー勢力の神族も加わり三すくみで、勢力の争いと同様に争いがあるらしい。シェイプシフターは神界とは距離を置いている様子で、何かを恐れているらいしい。
過去捕虜にしたシェイプシフターへ尋問を繰り返した結果、ふたつ目の内容についてわかったことだった。その情報を吐いたのち唐突に自害してしまい、聞いた以上の情報は、掴めていないとのこと。
ここまではわかっているとなると、他勢力というよりは違う気がする。混乱の元凶であるシェイプシフターが一番の問題で、彼らが何の目的で何を成そうとしているのかが、大きな課題だ。
仮に今回、勢力内紛争が起きて制圧した場合は、勢力代表は当然ギルドになるだろう。負けた場合は、いいなりになるか、餌食になり食われてしまうのだろう。ある意味負けたら、生きたまま食われるおぞましい物がまっている。
表面上は、まったく人と変わらないし当人の記憶も引き継いでいるから、シェイプシフターといえど気がつかない。看破スキルがないと判明できないし、俺のように監察官スキルで見ないと真贋の区別がつかない。俺のスキルは永続的でなく一時的な物なので、距離が離れれば使えない。
なので判明した人物を小まめに記録していくしかない。
俺は一部だけどダリルはすべてを話終えたあと、俺に確認するように話てきた。
「キセラ、すべてを知った上で聞く。勢力紛争に協力してくるのか?」
「いいえと言いたいところだけど、守りたい者も多少はでたから、殲滅するさ」
「ああ。この勢力にいる以上は奴らシェイプシフターに関わりたくなくとも、必然的に関わってしまうからな……。なんにせよ協力助かる」
「いや、こちらこそここまで、腹を割って話ができて助かる」
「そうだな。まだ話せない胸の内にしまっている物も、話せる時機になったら頼むな。今は情報が欲しい」
カマをかけるつもりで言ったのだろう。その手には乗らない。
「新しい情報を得たら、また相談させてくれ」
あくまでも”新しい情報”だ。嘘ではない。
「ああ。わかったよ。ギルマスが今日か明日には戻る。その時はまた相談させてくれ。作戦を決める」
「他の協力者は?」
「その時まとめて話をするさ。悪い、しばらく依頼は止めて置いてもらえると助かる」
「わかった。連絡を館で待つ」
こうして俺はギルドを後にして、連絡をまった。
神から奪った上位能力複製 〜一時的に使える力は妹の蘇生アイテム集めに!〜 雨井 雪ノ介 @amei_yukinosuke
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