第19話 神界と妹
俺たちは無事に館に戻ったあと、リビングに集まっていた。今回はメイド三人も、居合わせてもらっている。
どこまで何を話すべきか、少し迷っていた。詳しく話してもわからないだろうし、ここはかいつまんで神界に召喚されたことを話した。
やはり、神界のことは誰も知らないし、見聞きしたこともない様子だ。
神界の出来事は、皆涙ぐんでくれていた。同時に、現世との狭間の世界も知らなかった。どうやら、この世界で知る者はほんのごくわずかで、限られた者以外に知らないのかも知れない。
神から力を奪ったことや、銀の弾丸以外にも金の弾丸があることと、虹族の話しは伏せた。
今はまだ、信用しているとはいえ、なんでもかんでもは話しすぎる。
問題は大きくふたつある。今回話をした理由だ。一つは、一度でも力を解放したことにより、神界の誰かが襲撃しにくる可能性あある。ふたつ目は、シェイプシフターたちの狙いと今後の動きだ。こちらについては、俺たちだけではどうにもならないため、ダリルに明日相談することにした。
勢力幹部の内、四人がすでに食われていて、中身が入れ代わっている。そのことは過去の大戦で、シェイプシフターが暗躍しはじめた時と、同じ状態だとエミリーはいう。詳しくはエミリーもわからないため、合わせてダリルに聞く必要がある。
俺たちの切り札は、この銀の弾丸だ。
相手の能力を相対した時だけ、一時的に上位能力がコピーできるだけでは、歯が立たない。むしろ歯牙にも掛けられないだろう。本職の方が使い方に長けているからだ。
ただ利点があるとすれば、神界の奴らとシェイプシフターには、この能力までは知られていない。わからないのは、こちらの手の内が見えない意味で、好都合だ。
話せる範囲は一通り話を終えると、エミリーが力んで俺の両手を掴み上下に揺らす。どうやら励ましてくれているつもりのようだ。
「キセラ! 私決めたの!」
「へ? 何を?」
なんか嫌な予感がしてくる。
「キセラの妹が、蘇生できるようになるのを手伝うわ!」
「気持ちはありがたいんだけどな。この御時世だ、強化はしておいて欲しい……」
「でも……」
「なっ。ありがたいけどさ。強敵がきたときに手数が多ければ、勝てる可能性が増えるだろ? それにさ、勝てば貢献度が上がるしな」
「そっ……。そうね! 強化頑張るわ!」
理解してくれたようで何よりだ。問題はもう一名だ。どうしてそこで脱ぎはじめるのか意味がわからん。風呂はあっちだぞ?
「リリー。風呂はあっちの方なんだけど……」
「マスター。リリー感動しました。妹さんが来るまでにマスターとのややこを……」
「シノブさん。リリーがお疲れのようなので、入浴を手伝ってあげてもらえないですか?」
「承知!」
するとシノブとトモエは、リリーの左右の腕を捕まえて、風呂場へ引きずっていく。いつもの光景になりつつある感じだ。
今後のことは、明日ダリルに相談するとしよう。この”銀の弾丸”が本当に脳裏によぎる内容なら、逃げ出すのもムリはない気がする。その場合、相応の損傷を俺も受けるわけで、一体どの程度かがわからない。なんせ、人だからな俺は。
それにしても名前は”銀の弾丸”だけど、名前とは程遠い動きだな……。
エミリーは妙にやる気に満ちて今は、女神の雫を貪り食っている。たしかに太らないアイテムだけど、ちょっと行動が急すぎやしないか、エミリーさんよ。
こんな状況なら、妹が蘇生したら賑やかになりそうだ。ただ帰りたいと言い出した日にはどうした物か……。俺は、とくに未練は無い物の、妹が帰りたいなら元の場所へ、帰らせてあげたい。
ただ、帰る方法ばかりはまったく検討もつかないし、ノーヒント・ノープランだな。狭間にいたあの黒い生き物なら、何か知っているだろうか。俺には妙に友好的だったし。
いろいろと考えは膨らむけど、まずは目先の問題対処だな。
勢力戦争中なら、どうにもならないけど、今は幸いなことにまだ、その兆しはないらしい。俺としては”女神の雫”さえ入手できれば、手段はなんだっていいし、選ばない。
そのためなら、勢力幹部と争うのも覚悟の上だ。
問題は、強大な力の象徴である”超越者”がシェイプシフターなのかだ。仮に、すでに食われていた場合この勢力は、いいように操られてしまうだろう。
シェイプシフターが言っていた”アレ”とは何なのかが気がかりだ。そのための準備を慎重に、積み重ねてきた感じだからな。しかも俺の知らない”神界”の誰かと、約束している素振りすらある。むしろあの口ぶりだと、神界からの依頼に近いのかも知れない。
「必ず成功させるか……」
思わずグライドのいった言葉をはんすうしていた。この勢力内で何かをしようというのだろうか、それともここを拠点に何かをしでかそうとしているのか、検討がつかない。
もしかすると過去暗躍したという話なら、その時に成し遂げらえなかった物があれば、その可能性もある。俺はまだ貪り食っているエミリーに、その話の詳しい情報のありかを聞き出していた。
「ん〜そうね。多分ギルドマスター以外は詳しいこと知らないかも」
「それだけ秘匿情報なのか?」
「ええ。そうみたい。私が知ったのも、昔お父さんがギルドマスターと話しているのを、偶然聞いちゃっただけだからね」
「なるほどな……」
こうなるとダリルも知らない可能性もあるな。ギルドマスターに会う必要があるな。さて、どうした物か。不在が続くギルドマスターのことを考えながら、翌日の話の成り行きを考えていた。
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