第3話 裸の付き合い
「イレイナー。一緒に風呂に入らないかー?」
レベッカ様の声。レベッカ様はとても美しい女性で……お胸も大きいです。そんなレベッカ様とお風呂に入るだなんて…なんだか緊張しますね…。
「イレイナー?寝てるのかー?」
「はっ、はーい!起きてますよー!」
「ああ、良かった。イレイナ、風呂に行こうか。」
「いいんですか?誰かとお風呂に入るなんて、とっても久しぶりで…なんだかワクワクしますね。」
「そう言われてみれば私も誰かと風呂に入るのは何年ぶりだろうか…少し緊張するな。」
「私、準備があるので先に行っててください!」
「ああ。分かった。」
「タオルとお洋服を…『
うまくいきました。ふかふかのタオルに可愛いお洋服。これでお風呂の準備は万端ですね!
レベッカ様、何か考え事でしょうか…
「レベッカ様、レベッカ様?」
「ああ、すまない。少し考え事をしていた。」
「早くお風呂、行きましょ!」
まさかS級冒険者さんと裸のお付き合いをするなんて思ってもみませんでした。でも、いい機会です。これを機にレベッカさんと仲良くなれたら…なんて。
「世界はまだまだ広いということか…」
「どうしました?レベッカ様。」
「いや、なんでもない。それと、様は要らない。レベッカと呼んでくれ。」
「分かりました。レベッカさん。」
「さんも要らないが…まあ、いいか。」
レベッカさん、レベッカさん!うん!いい響きです。今日は怖いことがたくさんありましたがレベッカさん達のおかげで乗り越えられました。それに比べて私なんか…まだまだです。
北の大魔女様なんてよばれて少し浮かれていました。クリード様やレベッカさんのように私ももっと強くならなくてはですね。
「おお、広いな。ドラム缶風呂と聞いていたが…」
「その事なんですけど、ドラム缶だと狭いかなと思って魔法で大きなお風呂を作っちゃいました。」
「まさかクリードのやつはこれを見込んで…」
「クリード様がどうかしましたか?」
「いいや、なんでもない。それにしてもこの大きさ、『大きなお風呂』と言うよりも軽く『銭湯』だな。」
「なんですか?その『せんとー』っていうのは。」
「イレイナ、『銭湯』を知らないのか?」
「聞いたことないですね。『せんとー』というのは大きなお風呂なんですか?」
「ああ。大きな風呂だ。」
「うちのお風呂より小さいですけど…」
「お嬢様だったな。イレイナ…お嬢様で大魔法使い…なんだか称号の時点で負けている気がする…。」
「そんなことないですよ。今はとりあお風呂です!入りましょ!」
「おい、ちょっと…。ああ、行ってしまった…仕方ない、入るか。」
「まずは頭と体を洗いましょうか!」
「背中、流してやるよ。」
「私もレベッカさんのお背中、流しますね。」
「ああ。頼む。」
こうして、私たちはお互いに背中を流し合う
「レベッカさんの肌、とてもスベスベで綺麗ですね。頬ずりしたくなっちゃいそうです。」
「そ、そうか?肌のケアは大事だからな。私は毎日欠かさずやっているぞ。そう言うイレイナもモチモチで張りがあってとても綺麗な肌だ。」
「えへへぇ…そうですか?嬉しいです。」
「ところでイレイナ、お前、歳は幾つなんだ?随分と幼く見えるが…」
「お、幼く見えるのは何故です?!わ…私のお胸が小さいから…でしょうか?」
「あ、まあ、正直に言うとそれもある。顔といい、体型といい幼く見える。」
「実は私、妖精と人間のハーフなんです。年齢は今年で68歳なのですが、妖精族は人族よりも寿命が長いため、幼く見える器期間が長いんです。で、ですから、あと50年もすれば私もレベッカさんみたいな『ないすばでぃ』になりますよ!多分。きっと。」
「ろ、68歳…年下だと思っていた…すまないイレイナ。」
「年下に見られるのはいつもの事なのでもう慣れっこです。レベッカさんはお幾つなんですか?」
「私か?私は23だ。」
「23……若い…。」
「私は人族だからな。寿命は長くない。だからイレイナが羨ましいよ。」
「どうしてです?羨ましいだなんて」
「どうしてって、それはほら、寿命が長いってことはそれだけ時間があるってことだろ?だから、自分の好きなことの研究に打ち込めると思ってな。」
「たしかに、それはそうですね。私もつい3年前までは魔法の研究に明け暮れていましたから。それで北の大魔女と呼ばれるようになったのです。」
「そういう事だったのか。ようやく納得がいった。あんな幼い子供がどうやってあの魔法をみにつけたのか気になっていたからな。」
「そうだったのですか。」
「そうだったのだ。それよりも、だ。私が1番気になるのはクリードだ。あいつは見たところ普通の人間に見えるが人間とは思えないような魔法を無詠唱で使っている。」
「それはそうですね。術式の省略ですら妖精族やエルフ、ドワーフといった魔力の強い種族の中でも限られたものしか使えない魔法形態です。ですからクリード様が何故あれを平然とやってのけるのか不思議でなりません。」
「やはり、クリードに直接聞いてみるのがいいか…」
「そうですね。お風呂から上がったらクリード様に聞いてみることにしましょうか。さて、お風呂お風呂〜。」
お湯の温度はだいたい43℃。少し熱いですが疲れた体にはこのくらいが一番よく効くんです。
「あっつ!なあ、イレイナこのお湯、熱くないか?」
「そうですか?疲れを癒すにはこのくらいの温度がいいんですよ。さあ、レベッカさんも入ってください。」
「あちちち…」
「大丈夫です。そのうち慣れますよ。」
「本当だ。少し慣れてきたぞ。慣れるとこう、なんというか、体に染入るようなこの感覚…堪らないな。」
「そうでしょう。気持ちいいですねえ〜。」
「いい湯だ。」
私たちはしばらく何も話さずにお湯に浸かっていました。
「あーあー聞こえるか?イレイナ、レベッカ。」
「ひやぁっ!」
「なんだ?クリード…覗きとはいい度胸だな…。」
「覗き?いやいやこれは通信魔法だよ。声しか聞こえてないから安心してくれ。」
「それならいいが。」
「もう!クリード様、ビックリしましたよお!」
「すまんすまん。驚かせるつもりはなかったんだ。許してくれ。」
「それで?要件はなんだ?」
「あーいや、大したことじゃないんだが、飯、出来たぞ。それだけだ。」
「ありがとう。もうすぐそっちに戻る。」
「ご飯ですね。私もうお腹ぺこぺこです。」
「これ、全部お前が?」
「俺以外に誰がいるんだよ。全部俺が作った。味は保証するぜ。」
「クリード様、料理も上手なんですね!」
「まあ、人並みには、な。」
クリード様は見た目の割に乙女なのかも知れません。自分では「人並みに」とおっしゃっていますが、これは間違いなくプロの技。戦闘だけでなくお料理までこなしてしまうとは…さすがクリード様!素敵です。
「早く食べよう。冷めてしまっては料理が台無しだからな。」
「そうですね!頂きましょう。」
「頂くとしようか。」
クリード様の作る料理はどれもとても美味しいです。恐らく私が今まで食べた中で1番美味しく感じました。仲間と共に食卓を囲む…この何気ないしあわせがずっと続いて欲しいと私は切に願います。
「どうした、イレイナ。手が止まっているぞ?」
「いいえ。なんにもありませんよ。ふふっ」
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「この世界には少し躾が足りないようだ」をご覧下さり、ありがとうございます。
作者のnOwOn(ノウン)です。
1話から3話までご覧頂きましたが、いかがだったでしょうか?
ご意見、ご感想を頂けるととても嬉しく思います。
まだまだ新米の作者ですが、クリード達と共に成長していきたいと思います。
これからも応援のほどよろしくお願い申し上げます。
この世界には少し躾が足りないようだ。 ノウン @nowon
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