今だから話せるある兄弟の話
春秋 頼
第1話 お兄さんの波乱万丈物語
私が初めてお兄さんに合ったのは、私がお兄さんの弟と友達だったからだった。家に上がり二階に友達の部屋があった。兄弟兼用の部屋に案内されて「ちょっと待っててね」と言い弟はどこかへ行った。
最初はお兄さんがいることに気づかなかった。なんかダンゴ虫のように丸まった人がいる事に気がついた。笑いが出そうだったが弟である友達が部屋に戻ってきたので、「これ誰?」と聞いたら「うちの兄貴。汚らしい恰好して。ほっといていいから」と言われた。
しばらく話しているとむくっと起き上がった。完全に寝起きの顔つきで私に軽いお辞儀みたいなのをしてタバコに火をつけた。「ふーっ」と気持ち良さそうに息をはいた。上下ねずみ男色の短パンとシャツだった。それから何度か合うようになったがその服しかないのかと思うほどそれしか着てなかった。
ある日、行くと作業着を着ていた。仕事じゃないけど作業着を着ていたので洗濯でもしているのだろうと思った。
その家族は父親、母親、兄、妹、弟の構成だった。
唯一妹だけは結婚と離婚を繰り返して子供が多くいた。
たまたまご飯を食べる時間に私はいた。何を食べてるのかなーと思ってお兄さんに聞いてみた。「スパゲッティ」と答え、弟に「スパゲッティとかやめてくれ。パスタも知らないか」と責められていた。
私は「オシャレな晩御飯だね」というと「いあいあ。〇〇君。毎日よ」と言い返された。私が「御飯は?」と聞くと
米を食べた記憶を探っていた。「何年も御飯は食べてない。米は贅沢品よ」と答えられた。私はさすがに笑ってしまった。「米は贅沢なの?」「そりゃ銀しゃりは贅沢よ!」と言った。お兄さんは見た目がマスコットキャラみたいな感じであったためか親しみやすい人ではあった。完全に年下に遊ばれていた。
母親がスーパーでパートをしているらしくパスタなら激安で売ってくれるらしくトマトケチャップで味付けしただけのパスタを毎日食べていた。
私は当時よくつるんでいた中学時代の同級生とお兄さんの家に行くと車の音に気づいたお兄さんが暗い部屋のベランダから顏を出した。色々問題がある家庭だからあまり気にはならなかったが一応聞いてみた。「借金取りがよく来るからと」答えた。なるほどねと思った。借金は幾らあるのか聞いたら一千万以上あると答えた。よく借りれたね?と私は笑いながら聞いたところ、外国人と結婚したことにして不法滞在者のバイトしてたんだけど、その関係で知り合ったある町の饅頭屋のばあさんに騙されて借金が弟と合わせて一千万くらいあると答えた。
私も友達も爆笑した。そしてそういえば最近弟見ないけどどうしたの? と聞いたところ、全国をお兄さんと弟とあと若い男二人の四人組で自動販売機に千円札を入れて半分くらい入れた所で無理やり千円札を引き抜いて自動販売機が千円札が入ったと勘違いさせる方法で全国巡りをしていたと言い出した。無事に地元に帰ってこれたんだけど一緒に連れていった若い二人が兄弟抜きでやり続けたらしく、捕まってすぐに白状したため兄弟ともども捕まっていたと話した。
「何してんのよ?」と私と友達は笑いが出た。
弟が不在の時に警察官が4人くらいきて母親が心配そうに何か必要なものがあるのか警察官に聞いていたのがお兄さんの耳に入ったので「すぐ戻れるから」と言うと警察官に「戻れるわけないだろ」と言われたらしい。
その後、弟も捕まり弟は黙秘を続けていたらしいのだが、お兄さんは即自白したため早く帰ってこれたと言っていた。
この辺りからお兄さんは嘘つきが癖になってると私はすぐに分かったのだが、中学時代の相方はお兄さんを信じ切っていた。お兄さんが言うには「紙袋を顏に被らされてボコボコに殴られた」と言った。生臭坊主の家でよくその手の映画ばかり見ていたのでそこから考えたんだろうなと思ったが、突っ込み処が多すぎて笑うしかなかったが、相方は信じていた。
弟から久しぶりに連絡がきた。「兄貴がすぐに自白したから自分は長期で入ってた」と言った。
ある日、お兄さんの家に相方と行くとお兄さんが釣ってきた魚を七輪で炭火焼きしていた。
私は「お兄さん、風流だねー」と言うと違うのよ〇〇君。ガス止められてるからこうするしかないと言った。
結婚していた妹以外は家族全員がパチスロ大好き家族なためよく電気やガスを止められていたらしい。
私はよく洋画を借りていた相方はアダルト専門でお兄さんも一本借りていいよと言うと相方と喜んでアダルトコーナーに入っていった。
相方も相当変わっている奴でネタもありまくりなのだが今日はお兄さんに絞って話そうと思う。相方がレジに並んでレジの子が可愛いと何も発展するわけないのに可愛い子がレジだと私が受付にいっていた。お兄さんも厳選した一本を借りた。久々だと言いながら喜んでいた。
それから5日ほどたったので返却しようとお兄さんの家に行った。弟とは部屋は兼用してるし、居ない時に見たのかと思ったら「一緒にみた」と言った。マジかお兄さんと言うと、父親も部屋に入ってきて三人で一緒に見たと言った。
「ありえんわ」と私と相方は笑いながら言った。
ある日お兄さんの唯一の移動兵器である自転車に乗って私の家にきた。地元では割と有名な中高学生のたまり場でご飯を食べて行こうと話して店の目の前に自転車を止めて、店には誰もいなかったので入って注文して食べ終わって店を出たら、お兄さんの自転車だけ盗まれていた。私も店の目の前だし鍵はかけなかったのに、何故かお兄さんの自転車だけ盗まれていた。暴走族の奴らが取ったことがすぐにわかった。お兄さんのだけ取られたことでお兄さんも爆笑はしていたが「ありえん」と何度も言っていた。
確かにあり得ない。私は個人的にはそいつらを知らないがお兄さんは話とかする奴らに唯一の移動手段を取られ探しに行った。だいたいどこにいるのかは分かっていたため簡単に見つけた。
お兄さんの運が尽きる時が来た。私以外だと一人だけお兄さんにいつも弁当をおごってあげていた年下の子がいた。
ある日パチスロでお兄さんが三万くらい勝った。コバンザメのようにお兄さんは私たちについてきて横に座った時など三枚たまに入れてあげたりしてた。それが結構当たり三万円になった。そしてその年下の子は大負けをして弁当も買えない状態だった。当然お兄さんおごってとその子が言うとお兄さんはなんと断った! これには周りも私の相方も引いた。
そしてお兄さんの運が尽きる時がきた。相方と同じく私の中学からの同級生でしかもヤバい奴に私が話しているのを見て近づいてきた。私には害のない奴だったから私は問題ないのだが、すぐにお兄さんの悪運が尽きたことはわかった。
ある日、私は鉄拳タッグトーナメントの対戦をしていた。
その友人が近づいてきて、それ面白いの? と聞いてきた。面白いけどめっちゃ難しいと私は言った。
私はゲームが上手いことは有名だったから彼は興味を示した。そしてお兄さんも対戦して相手を十連コンボで倒しているのを見てそいつは「お兄さんすごい」と言いお兄さんに家で対戦の練習相手になってと言って連れていかれた。
その時点でどういう事になるかは予想はできたので笑えた。
それから数日後、お兄さんには勝てるようになったからちょっとうちで対戦相手になってほしいと言われ「お兄さんに勝てる程度じゃ話にならない」とは言ったが「一応自分がどのくらい強くなったのか確かめたい」と言うので行く事にした。「お兄さんは?」と聞くと家で待たせてると言った。拉致された日から五日ほどたっていた。手抜きをして百戦くらいして0か1勝くらいだった。「これ面白いね。でも滅茶苦茶難しい」と言った。「俺に勝てるようになるのはまだまだ無理よ」と私は言った。お兄さんは元気がないというか長老並に髭を生やしていた。そいつがちょっとトイレってくると言って部屋を出た瞬間にダッシュで横に来て〇〇君助けて!! と言った。私は予想はしてたので大爆笑した。トイレからどしたの? と声が聞こえた。お兄さんは真顔に近かったがあの若い子に弁当を奢らなかった罰として次回まで様子を見る事にした。
「もうちょい練習するわ、今だと相手にならないね」と彼は言って私を家まで送る間、何をしたのか話を聞いた。
当時彼はチョコエッグというチョコの中に玩具が入っているのにハマっていた。拉致当日、コンビニに車を止めてそいつが欲しがっている玩具が入っているチョコエッグを選んで来るようお兄さんに買いに行かせたと言った。しかも一個づつ買いに行かせたらしく、お兄さんが「〇〇君。何個かづつは駄目かね」と言うと、そいつは「じゃあ当たりが出たら他のはお兄さん買い取ってくれる?」と言ったらしく、お金がないのを知ってるくせに結局そのコンビニには欲しがっているのは無かったらしい。在庫のも一個づつ買ったけどなくてお兄さんに「お兄さん! これ高いんだからちゃんと選んでくれないと」とお兄さんは叱られたらしい。その全てのチョコはコンビニのビニール袋に入れられこれ御飯だから大事に食べてねと言ったらしい。確かにそいつの部屋でも言われていた。袋に入ったチョコエッグのチョコをお兄さんは食べていた。それからも数日拉致している間も御飯を食べに一緒に行って彼が注文したのはお好み焼きとたこ焼き八個を注文して、その店の人にこの人お金ないからそれだけで。と言ったらしい。鉄板焼きの小さな店だから真正面に座っていようがそいつは下僕的な相手には言うやつだと私は知っていた。お兄さんに水をついであげて水はタダだから大丈夫! というようなやつだった。何も大丈夫じゃないわ! と私がいたら言うんだがと思った。お好み焼きを食べたあとたこ焼きを黙々と食べてラスト一個になった。お兄さんお昼ご飯コレね。と言われてお兄さんは一個のたこ焼きが昼ご飯だったらしい。
開放されたのは約二週間ほどだったようだ。それがわかったのはある日電話が来て、対戦で鉄拳をしてるんだけどもう三十敗くらいしてるからちょっと闘ってみてほしいと。
私が行ってみるとキャラクターは確かに二人とも弱いキャラクターを選択していた。その彼とは何度か対戦したことはあるが、本命キャラはシャオユウで華麗すぎてびっくりするほどの腕の人だった。私が行って弱いキャラクターは倒したが
基本的な腕前は私よりも全然上の人だった。
何故勝てないのかが分からないほど君が弱いのよと私は彼に言った。お兄さんじゃもう練習相手にもならないだろうと私が言うと、このゲームが分かってなかったから最初はお兄さんすごいと思ったけど、今は恥ずかしいと彼は言った。
十連コンボは正直かなり恥ずかしい。下手な人でもキャンセルされなければ入る技だったからだ。
お兄さんはそこで開放された。送っていこうか? とお兄さんは言われていたがまた拉致されるかもしれないと思ってか断っていた。
そんなお兄さんの物語でした。
今だから話せるある兄弟の話 春秋 頼 @rokuro5611
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