心に描く





 何度か深呼吸をして、頭の中で繰り返し練習した言葉を伝える。


「……お父さん」


 その呼びかけに、ハイネの手が止まった。


 エマは、十七年前の彼に応えた。


「私も、愛してる」


 ハイネがゆっくりと振り返る。


 叶うことならば、その時のハイネの顔を絵に残しておきたかった。


 けれどエマには残念ながら絵心がないし、ハイネ自身が描いてくれるとは思えない。


 ――だからエマは、目に焼き付けた。


 いつまでも、心の中にこの光景を描けるように。



 <了>

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【完結】魔術師ハイネのアトリエ 水奈月 涼香 @minasuzu

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