冬の大三角と芸術

宮沢賢治の小説を読んでいるような気分になった。あるいは、『星の王子さま』で有名なテグジュペリの小説を彷彿させる。星が人の形となって対話するという連想から導き出されたのだろう。

童話らしい優しい語り口の中にも、しっかりとした芸術に関する作者様の意志や思想が垣間見える作品だ。と言っても、その語り口はあくまで優しく、希望を感じさせるものである。一家言ありつつも、全てを抱擁する寛大さがある。

冬の大三角を構成する星、ペテルギウス・シリウス・プロキシオンは三柱の神々なのだろうか。いずれにせよ、宇宙に煌めく星々に人格を与えて語らせるという構成はずいぶんと昔から試みられている。

しかし、作者様が与えた人格は現代的で芸術を志す若者のそれに近い。そこにクスリと笑ってしまうような温かさがある。微笑ましい光景である。それが、作者様の技量なのだろう。「ユニーク」な作品だ。それは間違いない。