第7話 シナヌミライスクウミライ

 俺は母親が用意してくれたホテルに着き、帰り道のコンビニで買った弁当を食べ終わると着替えもせずにベッドの上に仰向けになった。


 俺は今日死んでたかもしれない、


 そんなことは考えもしなかったが、事故や病気は突然起こりうることなのだろう。


 それと同じように自分の想像を越えたようなできごとや、自分とは関係ないと思っていることも突然自分を中心に動き出す。それが、今日突然訪れたとしても実はなんら不思議ではないのかもしれない。


 それに、俺が何も知らないだけでこういうことはあらゆるところで起こっていて、たまたま俺にもスポットライトが当たっただけの話なのだろうか。


 そんなことを考えているうちに俺は眠ってしまっていた。



 はっ、と目が覚めると


 毎日の日課だったランニングに間に合う時間だった。やっと寝なれてきた枕で見慣れてきた天井。というわけではなく、生活感の無い綺麗なホテルのベッドの上だった。

 やはり、夢オチってわけにはいかないよな。


 シャワーを浴びながら昨日のことを思い出す。俺がここにいるということは、おばさんの家はガス爆発してなくなり、昨日話を聞いたというのは事実だろう。


 シャワーから出ると、スマホにメッセージがきていることに気がついた。

 幼い頃からの親友であり今も同じ学校に通っている日下部 草太(くさかべ そうた)からだった。



「なんか大変だったみたいだけど、大丈夫か?」



 今の俺は大変に該当するものが多くあったが、きっと家のことだろうと思い返信した。



「あぁ、俺は大丈夫。これからは別のところから通うことになりそうだからそんときは教えるわ」



 そうたは昔から俺の心配をよくしてくれていて、年は同じだが兄貴的な一面を見せることがちょくちょくあった。その一方で見た目は小柄で茶髪のいわゆるちょっとチャラく見えるやつだ。



「そうか 無事ならオッケー 復帰初日から散々だったな また学校でな!」



 何気ないやり取りだったが、普通の会話が新鮮に感じた。

 今後のことを、相談するとしたらそうたしかいないと思ったがさすがにあいつも信じてはくれないだろうとも思った。


 そういえば、着替えや教科書など全部おばさんの家にあったから何もないな。制服はいいとしても、Yシャツと肌着、それに下着は代えたいな。午前中は実家に帰って最低限の荷物はまとめとくか。


 そんなことを考えていると母親からの着信が鳴り響いた。


「おはよう 昨日は大変だったね それからあんたの住む場所なんだけど、急いで手配しといたから今日からそこでお世話になりなさい

 母さんも父さんも行けなくてあんたには悪いんだけどね 住所は送っとくから それとおばさんは家を直すまでは安いアパートを借りるみたいだから それじゃ気を付けてね」


 我が母親ながら、さすが仕事が早い。住む場所ってそんなに早く探せるものなのかと思った。実家から通ってもよかったのだが。


 実家は学校の最寄り駅から電車で約一時間半のところにある。


 通えなくはない距離だが、両親が共働きかつ海外出張も多い仕事なので野球に集中するためにも近いところでということになり、たまたま近くに住んでいたおばさんの家から通っていたのだ。


 電車に乗り実家に着くまでの一駅一駅を過ぎる度に入学した日のことを思い出す。

 甲子園出場を決めるまで、実家には帰らない。この景色をまたみる時は甲子園を決めたときだ。と息巻いていた自分には、今日のことを話せたとしても信じて貰えないだろう。


 実家に着き自分の部屋で衣服をまとめていると懐かしいものを見つけた。

 小学生の頃に書いた文集だ。


 あーこんなものあったな


 ペラペラとページをめくり小六だった俺が書いた作文に目を通す。


 将来の夢


 ぼくはプロ野球選手になって10おく円プレイヤーになって大活やくしたいです。


 なかなか惜しいな。少し前ならプロ野球選手ってやつだけは叶うかも知れなかったけど10億はやり過ぎだろ。そんなことを思い読み進めていくと。



 最後に

 もしプロ野球選手になれなかったら、

 世界を救うすごい人になりたいです。



 そう書いて作文は終わっていた。


 そんなことを書いていたのを完全に忘れていた。

 それはプロ野球選手より難しいんじゃないのか、当時の俺よ。

 それとも本当に俺が、、、





 昨日の翔子さんの言葉が甦る。








「未来部の活動は大きな過去改編を防ぐこと!



 そしてなつおくんには世界を救ってもらう!!」




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ミライマニア かずぺあ @kazupea748

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