第2話 こいばな 🐟 VOL.2
文久3(1864)年の第一次長州征伐の折り。🐎
当藩は後備えを命じられましたが、長州藩の恭順で、兵を出さずに済みました。
胸を撫でおろしたものの、そうは都合よく問屋がおろしてくれませんで、慶応2(1866)年の第二次長州征伐で、当藩はふたたび将軍の後備えを命じられました。
でも、例によって、またしてもグズグズしておりましてねえ。( *´艸`)
将軍の出立から半月遅れで呉服橋の江戸屋敷を出発したもののあなた、呆れるではございませんか、川崎で4泊、藤沢で4泊、小田原で5泊と、宿場ごとに長々と遊山していたので、大坂の生玉本陣への着到は出立から53日目というのですから……。
まして、当地からの一隊の体たらくについては申し上げるまでもございません。
さらに、ご存知のとおり幕府軍の敗退後は、広島城下、金毘羅宮、善通寺、屏風が浦などをのんびり見物しながら、3か月もかけて当地へ帰着したのでございますよ。
*
そんな具合ですから、大政奉還、戊辰戦争と激動する世の趨勢をよそに、当藩では事ここに至ってもなお佐幕か帰順かで揉めておりまして、ようやく岩倉総督に勤王の誓約を行った藩主は、優柔不断の咎で謹慎を申しつけられる始末でございました。
え、内陸では多かれ少なかれ似たようなものだった?
そう言われれば、たしかにそうかもしれませんねえ。
まあ、当藩主も他藩と同じく知藩事に任命されて、つつがなく明治時代に移行したのでございますから、終わりよければすべてよしということにいたしましょうか。
*
ちょ……だれ? それ。👗
そして、なに? それ。🥤
えっ、あなたさんの、ご朋輩?
それもかように美々しき女人。
いやですよ、早くそう言ってくださらなきゃ、うっかり惚れてしまうところだったじゃございませんか。こう見えてわたくし、恋多き鯉なんでございますから……。(⋈◍>◡<◍)。✧♡
いえ、それはこっちの話でございますけど。
で、その香しい湯気を放っているものは?
――赤いきつね & 緑のたぬき。🍜🍜
二ノ丸の斜向かいのコンビニで買ったものにポットのお湯を入れてもらって来て、これからふたりで仲良く食べるところ? あ、さいざんすか、どうぞ、ご随意に。
あ、でも、その丸まっちいカップには見覚えが……。($・・)/~~~
ああ、思い出しました、新型コロナウィルスとやらが大流行する前、異国からたくさんやって来た観光客が「これぞ日本の味、ワンダフル!」とか言っておりました。
幕府が倒された明治維新のあとに日清・日露戦争があり、よせばいいのに列強諸国に挑んだ太平洋戦争で大負けし、やれやれ、この国は終わりかしらと思っていたら、どっこい、しぶとく立ち直り、世界に冠たる経済大国にまでのし上がった……。
赤と緑、ふたつのカップ麺は、高度経済成長の
堀から人間界を見守って来た身としても、いささか感慨深いものがございますよ。
*
ああ、しんど。((+_+))
いい歳をして、少しおしゃべりが過ぎたようでございます。
枯れ柳の葉陰でひと眠りしたくなりましたので、あなたさま方はその辺のベンチでおくつろぎになるなり、お忘れにならないうちにわたくしの話をスマホとやらにメモなさるなり、どうとでもお好きになさってくださいまし。
では、これにてご無礼をば……。
ああ、そうそう。♡(*^。^*)♡
大切なことを忘れておりました。
繰り返しになりますが、なにしろわたくしは昔「お堀小町」でございましたから、殿方はよりどりみどりでございましたが、こう見えてわたくし、顔より中身のタイプでございますから、うるさいほど群がる真鯉の内でもシブい殿方に惹かれましてね。はたもうらやむ相思相愛のカップルなどと言われ、せっせと子づくりに励みました。
で、その子どもたちがまた親に似て、数えきれないほどの子どもを産みましてね、イチイチ覚えておりませんが、現在は、ひーひーひーぐらいのおばあちゃんなんじゃないでしょうか、わたくし。ですから、このお堀は系類だらけなんでございますよ。
さあねえ、めでたいんだか、めでたくないんだか。( ^^) _U~~
これで長生きも善しあしでございましてね、人間の寿命の何倍かの200年も生きておりますとね、あなた、たいていのことは、どうでもよくなるんでございますよ。
*
鯉が語る恋の話。♡(。・ω・。)ノ♡🐟
これが本当のコイバナなんちゃって。
ではでは、今度こそ、ごきげんよう。
こいばな 🐟 上月くるを @kurutan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます