第9話 傀儡師見習い-Alycia-
「ねえ……これどうにかならないかしら」
「ならないねえ」
間髪入れずの返答だった。
「せめてもう少し絡まらないようには……」
「できないねえ」
考える素振りすらない返答だった。
「気が利かないわね」
「きかないねえ」
にべもないとはこのことだ。
ネイトに愛想を期待していたわけではなかったが、それでももう少し言い様があるのではないかとアリシアは思うが、それが愚考であることは彼女自身が理解していた。なにせ相手は趣味人のネイトである。期待するだけ無駄なのだ。
「ネイト先生、これ本当に必要?」
先生の部分を強調して伝えるアリシア。
鬱憤が溜まっていると言わんばかりにジト目でネイトに自然を送る。
彼女にできる精一杯の反抗であった。
「前に言ったでしょう。特別製だって。その子の動力の本質は引く力なんだよ。だから扱うには力が必要だし、何よりそれを効率よく伝える動きが出来なくちゃちゃならない。つまり
あの日、傀儡人形のレビィを相棒としてから早一か月が経過していた。
「はい。だめー」
ネイトは両手を頭上で交差させて大きな×を表現している。
どのくらいダメかをアピールしているらしい。
「なんでよ!?」
「この子を譲る代わりに約束してもらったじゃないか。圧倒的な実力差で
「それは――」
『わかってるわ』とアリシアは力なく答えた。
学業成績優秀な優等生ことアリシアである。自分の情報を敵に見せるという不利をよく理解していた。ここでいえば人形を使えないと思い込んでいる相手の弱点を狙えなくなってしまう。もちろん最初の一戦でしか使えない利点ではあるが、
「わかってはいるのだけど、ね」
感情と理性は別物である。
それはネイトも理解していた。
「しょうがないな。じゃあちょっと早いけど必殺技の練習でもしようか」
「必殺技?なにそれ?」
一般的に人形劇では効率的な人形の運用が全てである。
術の行使、移動の仕方、タイミング、攻め手と受け手。各々がどれだけ正確に正しく行えるかが勝敗を決める。そこに必殺技などというものはなく、単純な相性の問題しかない。だが――
「レビィは傀儡人形だからね。伊達や酔狂で歯車がたくさんついてるわけじゃないんだ。簡単に言ってしまえばある一定の入力をすることで特殊な動きを起こすように造られている。例えば……」
ネイトがアリシアから糸繰りの指を受け取り、レビィを動かした。
ギィ……キリキリキリキリ、ガチャンッ!
――ギィ……ィィィーーーッ!キリィ!!
一つの音を皮切りに歯車が動き、噛み合い、連続した動きを見せる。
普通に人形を操っていたら不可能な速度の動き。最初からこのように動くよう造られていなければできない動きだ。もし対戦相手が目の前にいたとしたらどうなうか。
「――すごいわね」
「だろ?実践までにこの動きを覚えてもらわないとね」
「ええ、任せなさい。私、こう見えて優等生なのよ」
「それは知ってる。君は有名人だからね」
――月日は経ち、学園前期人形劇が開催される日になった。
才能なしの落ちこぼれな私だけど元婚約者と結ばれるために頑張ります!! 砂鳥 @replicant
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