おまえさん、あの沼の言伝えが気になるのかね。
そうさなあ、あそこには、蛟さまが居なさるそうな。ああ、近づかぬ方がええ。さわらぬ神に祟りなしじゃ。
禁忌が破られたのは、一人の母親の、深すぎる愛所以か。
我が子の為ならば、神の子を喰らおうと、村に厄災が降り掛かろうと、他の者が犠牲になろうと、構いはせぬーーそれは恐ろしき女よ。
じゃが、わしらはそれをただ身勝手と責められようか……。
女が、村が、どうなったのか。では、ゆっくり聞いていきなさるが良い。
幸い今では村にも雨が降るようになり、ほれこの通り、これからひと雨きそうじゃからな。