題未定
春野 あじさい
プロローグ
朦朧とする意識。
打ち上げ花火が消えるように、刹那に、でも少しずつ暗くなる視界。
途端それは海の遥か下、日の光も通さぬ深海を沈んでいくような。空の遥か上、全てが遠い広大な宇宙に飛ばされたような。
そんな感覚の中心にいたのは、1人の少女と、1人の男性だった。
少女は嬉しい時も悲しい時も、どんな時でも男性と一緒だったし、また、少女が目をキラキラ輝かせ、ダンスを踊るように饒舌に話している時も、こぼれる涙と嗚咽から静かに言葉を探しながら話している時も、男性は隣に寄り添って聞いてあげていた。
少女が男性の腕に自分の腕を絡ませる。
一緒にテレビを見ていても、公園で遊んでいても、並んで歩いていてもそうしてくる。
男性が少し困った顔をするが、少女はこうするのが1番落ち着くんだと言って離さない。男性はそのまま少女を持ち上げてお姫様抱っこをし、意地悪な顔を浮かべて少女を揺さぶる。
そこにあったのは、天からすればほんの一粒の砂のような、愛で、幸せだった。
題未定 春野 あじさい @keisuke5108
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。題未定の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます