祖母のうどん

作者 沢田和早

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★★★ Excellent!!!

お題である赤いきつね、標語に掲げられた幸せしみるショートショート。
そのテーマをさりげなくも上手に取り入れた秀作です。
平易で読みやすい文章も、教科書に載っていても違和感ないほどスラスラと目を通せました。
カクヨムは長編より短編書きのほうが筆の立つ方多くお見受けするのは気のせいだろうか…(と長編書きが申しております)。
濃い味のカップ麺の対比として薄味のうどんが導入され、和解の象徴なのか、最後の展開は「ああ、そう来るのか」と声が出てしまいました。
泣かせる展開ではないものの、ゆえにお袋の味ならぬお婆の味の奥ゆかしさもしんみりと感じられました。

★★★ Excellent!!!

 いわゆる、『イイ話』を書こうとすると、故人を悼むようなしんみりとした作品に遭遇しやすい。
 もちろん、ダメ、とは言わないが。
 命の尊さや思い出の中の切なさを物語の主軸に据えるのは、安易なだけに比較されれば類似作も出てくるし、被ったり埋もれたり、は日常茶飯事だろう。

 その点、こちらの作品は一線を画する。

 後悔や、感謝や、老いていく命への描写を織り込みながら、スポンサーのカップ麺に対するその仕打ちはどうなのだ!? とすら思える、憎めない祖母からの意趣返し。
 その全てが、愛情の根底にあることも欠かせない。

 そうそう、こういうのでいいんだよ。
 生きる、とは、食うことでもある。美味くても、不味くても。
 育つも、老いるも、同義である。
 死を思うことだけが、命の尊さの量りではあるまい。

 この祖母のキャラクター性に、敬意を表したレビューを贈ろう。