第23話

 レオンはそう言うとズボンのポケットから人形を三体取り出す。


「これは、魔法界……私の能力で出した魔法の道具で、使い方は使用者の髪の毛を一本、人形の頭に刺すと……」


 レオンは説明しながら自身の髪の毛を人形に刺す。

 すると、人形はモリモリと段々と赤くなっていき、徐々に肉塊にーー自己規制ーー


「「「気持ち悪っ!」」」


 流石に気持ち悪すぎて世界の声(ナレーション)すらも自己規制してしまった人形は、最終的にレオンの姿となる……生まれたままの姿で。


「ちょ……! ルナール! 後ろ見てて」

「は、はい」


 ガバッと振り向くルナールを尻目にレオンは急いで服を買い、それをダンに渡し、服を着せさせる。


「着させました」

「もういいよ。ルナール」

「急で驚きましたよ」


 ごめんごめんと言いながら、レオンは人形を起こし呟く。


「身代わり人形起動」

『起言確認。術式展開』


 レオンの言葉に反応し、人形ーー身代わり人形は、独特の機械音を発する。機械音と同時に人形の各部から魔法陣が展開される。

 ダンとルナールは高度な魔法に息を呑む。そんな、二人を置き去りにしてレオンはさらに命令を下す。


「パターン分析及び命令『暗殺者がきた場合、殺されろ』」

『起言確認。分析術式。分析完了。命令受諾。私はこれよりレオン・タスフェルドの身代わりとして微力を尽くす』


 レオンの指示に応じて、身代わり人形はレオンの体を魔法陣でスキャンすると、突如として、動き方、声が変化する。


「……私の声はこんな感じなのか……」


 身代わり人形はレオンをスキャンしその動き方から声の出し方まで全てを模倣していた。


「私よ私は先に奥の部屋で待機しておく」

「わかった、私よ。二人もこの人形に髪の毛を刺して、人形を作っておいて。あ、ルナールは違う部屋で作ってね」

「「わかりました。」それでは、失礼します」


 レオンの言葉にレオン(人形)、ダン、ルナールはそれぞれ動き出す。





 ダンとルナールが人形を作り、それぞれの人形が奥の部屋で待機している中、レオンたちは商館の地下(貯蔵庫)で監視カメラ(商館の機能)を用いて、商館の様子を確認していた。


「あ、侵ってきた」


 監視カメラのモニターには、商館に侵入する男たちの映像が流れていた。


「ですね……あれ?」


 映像を見ていたルナールが疑問の声を挙げる。


「どうしたの?」

「いえ、この人何処かで……」

「おそらくはシルフィード伯爵に出入りしていた暗殺者か傭兵の類でしょう。それで見覚えがあるのかもしれませんね」

「ダンの言う通りだろうね。こんなのを囲っていたとは知らなかったな。あ、トラップに引っ掛かった」


《生物を殺害しました。魂の回収を始めます。成功しました。人間の魂を糧に強欲の権能が成長します》


「死んだみたい……はあ!?」


 モニターには隊長と呼ばれた男が弾丸を弾きつつ駆け抜ける様子が映し出されていた。

 レオンは回帰前にも体験していたことだが何度見ても信じられない、といった様子で呟く。


「あれを弾くとか……さっき撃った時もさばいてたけどどんな反射神経してるんだ……?」

「結構速くて、小さいので難しそうですけど慣れれば私もできそうです!」


 レオンの呟きにルナールが元気に答える。それを聞いたレオンは信じられないものでも見るかのようにルナールを見る。


「たしかになんとか見えてはいるので、気をつければ何とかなりそうですね。不意打ちだと流石にどうしようもなさそうですが」


 お前もかダン、とでも言いたげな視線をダンに送るレオン。

 どうやらファンタジー世界の住人を甘く見ていたようだ、と認識を改めつつ、自身の人形が殺され? 壊され、男が去る一部始終を見届ける。


「さてと、これでしばらくは安心かな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

商人貴族は銭で世界を救う〜伯爵家長男だけど職業適正が商人だったので追い出されました〜 狛夜シロキバ @byakuyatukumo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ