第6話 逃げた先での出会い

 風露は逃げた。もう村には戻れない。これからどうしよう。


 気づいた時には、知らない森にいた。もう体力は空っぽ。何も用意せずに村から飛び出して来たものだから、荷物にはパン1つと魔導書と杖しかない。

 風露は疲れ切ってお腹が空いていた。全てが嫌になって、1 つしかないパンを後先考えずに頬張ると地面に倒れて眠ってしまった。


「あれれ、こんな森の中で寝てる人がいる。のんきな人だなぁ。まともな旅人にはとても見えないし......。 家出、かな?」

 突然、 高い所から高い声が降ってきて、眠っていた風露は目を覚ました。

「う、うぅー?」

 自分の存在の確認の為に声を出してみる。良かった、生きてる。

「息はあるみたい。けど、疲れてるのかな。あ、起きた」

 ゆっくりと目を開いて、声の主の方向に顔を向けると、そこにはこちらを不思議そうに見つめる少女がいた。

 丸い黄色の瞳でこちらを見つめる少女は、空色のメッシュが入った白髪をかなり高い所でポニーテールにまとめ、 動きやすそうな白い服を纏っている。

 そんな少女には人間の耳がなく、代わりに顔の真横に 獣の耳が生えていた。

「大丈夫? 起きれる? このまま寝ていると死ぬよ」

 そう言って少女は風露の前に手を差し伸べた。風露が恐る恐る少女の手を取ると、想像以上の強い力で引き上げられて跳ね起こされる。

「えーと、ありがとう。ところでここはどこか….……..あ」

 左右をキョロキョロと見回しながら自分がどこにいるのか聞こうとすると、風露のお腹がなってしまった。

「お腹すいてるの? ならこれあげる。私、ニンジンそこまで好きじゃないから」

 そう言って兎耳の少女は焼いたニンジンを差し出してほほえむ。そのほほえみに、風露は、この兎は何なんだろうと疑問に思ってしまった。

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Forest·Story 第1章  第1話  兎耳と魔法使いの成長譚 @Forest_Ropu

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