第10話 レッスン1の成果を試してみた。

「Hi. Eliza. What are you reading?」


 朝の教室。

 俺はエリザ・ナイトに話しかけた。

 エリザは目を丸くして驚き、俺を見つめている。クラスの皆も同様だ。誰も話しかけない、話しかけることができない聖域と思われていたエリザ・ナイトに話しかけた勇者がいるのだから。それも英語を使って。


 エリザはぽかんとしていたがやがて口を開き、


『フルメタル……パニック……』


 ネイティブな発音でそう言った。

 そして、俺も彼女から先生から習ったネイティブな発音で英語を話す。


『あ~、フルメタル・パニックね。面白いよね。映画にもなったよね』


 ぶっちゃけ、よく聞き取れていない。フルメタ何たらって確か有名な戦争映画のはずだ。だから、あてずっぽうで話す。それに、発音の仕方を先生から習ったが、単語の知識はまだないので、簡単な英語しかこっちは使えない。


『そうなの? 知らなかったわ。私、アニメしか見てなくて。今度探してみるわね』


 リアリィ? と、言っているのは聞き取れた。

 なら、適当に。


『そうだよ。凄くいい映画だから、見た方がいいよ』

『そう。やっぱり日本に来て良かった。私が知らないことをいっぱい知っているのね。ありがとう、ゆーま』


 Thanks Yuma.


 彼女は確かに最後にそう言った。

 名前、憶えていてくれた……。

 それだけで感動して、胸があったかくなった。


 キーンコーンカーンコーン。


 ちょうど、朝のホームルームを知らせるチャイムがなる。


「お~う、席につけぇ~」


 担任教師が入って来て、本格的に俺とエリザの終わりが訪れる。

 俺はエリザに軽く手を挙げ、前を向く。

 エリザも本をしまいながら、担任の方を向こうとする。

 その直前に、


 ニコッ。


 誰にも、少なくともこのクラスの誰にも見せたことのないような笑顔を、俺に見せてくれた。

 心の中でガッツポーズをした。


 よし、楽しく話せたぞ!

 頭の中で『パーフェクトコミュニケーション!』と効果音と共に文字が浮かんだ。

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英語圏Vtuberやってる幼馴染を持つと、イギリス人転校生を攻略できる あおき りゅうま @hardness10

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