§ 2―9 先への道しるべ



「それで、おれたちはこの後どうすればいいんだ? 」


「そう、それ。ようやく導き手の仕事ね」


「その、導き手っていうのは何なんだ? 」


「まぁ、言葉の通りよ。ここから先、この無人むびと界をどう進めばいいのかを導くのが導き手のお仕事よ。あなたたちのその装備も、地下での特訓もその一環ね」


 特訓だと? そんな簡単な言葉で片付けられるものではなかった。抑えていた苛立いらだちが蘇ってくる。


「じゃぁ、この無人むびと界をどうすればクリアできるかってことからね。それは、この神殿の北にある、城の一番奥まで行けばクリアよ」


「城? 」


「そう。でも、城の入口には城門があって鍵がかかってるわ」


「城門? 鍵? 」


「そうそう。だから、まずは鍵を手に入れないといけないの。その鍵は、西の森の奥にある湖にあるから、それを取りに行ってね」


「……そこには、人……はいるのか? 」


「もちろんいるわよー。そんな簡単に進めるわけないでしょ? 」


「…………」


 蓮の気が進まない様子を見抜き、天咲あまさきは言い放つ。


「鳴無 蓮くん。あなたは何を成すためにここまで来たの? 何が出来なくてここに来たの? 」


「え……」


「自分自身のことをちゃんと理解するのね」


 蓮はどきっとする。心の葛藤かっとうを見透かされたのかと。


 横で静かに聞いている愛菜が立ち上がる。蓮に視線を送り、表情なく言う。


「蓮。あなたは先に進むのよね? 行くなら一緒に進もうと思ったのだけど」


「……。解かってる。一緒に行かせてくれ」


 そう答える蓮は、愛菜に目を合わせなかった。



 これから先に進むにあたっての注意点などを聞いた後、早々と出発しようとする愛菜に対して、気になっていたことを聞く。


「護は一緒に行かないのか? 」


「彼はここまでみたい……」


「? 」


 愛菜が言いづらそうにしているのを察して、天咲響が答える。


十二月田しわすだまもるくんは、当分地下の訓練が終わりそうにないわ。きっと、ここまで来たことを後悔してるわね」


「そんな……。助けに行かないと! 」


「それはダメよ。特訓は1人で乗り越えないといけないルールだからね。それに、これから先は弱肉強食。強くなければ、足手まといになるだけよ」


「足手まといだって! 護がいなければ、ここまで来れなかったんだ」


「ここまではね。でも、これから先は無理よ。1度行けば解かってもらえるわ。まぁ、何を言われても、彼が1人で訓練を終えるしかないの」



 やむを得ず、愛菜と2人で先に進むことにする。出発する前に天咲に神殿の外に連れて行かれた。


 神殿の外には、いくつか石の外壁の家が建っており、何人かはそこで、先に進むのを諦めて過ごしているとのことだ。その人たちがこの先どうなるのかは敢えて聞かなかった。良い答えが返ってくるはずもないだろうから。


 天咲に連れられた先は、神殿から30m程離れた岩場で、特に周りには何もなかった。


「じゃぁ、ちょっと鳴無くんの刀を貸して。鞘も一緒にね」


天咲に言われるまま、刀が納められた鞘を腰袋から外して渡す。


「ありがと。それじゃ、1度だけ見せてあげるから、よく見ててね」


 そう言うと、左手で鞘を持ち、右手で納刀のうとうされたままのつかを握る。周囲には何もなく、10mほど先に電柱ほどの太さの枯れ木が立っているだけだ。


 天咲は腰を落とし、鞘を持った左手を左腰にとどめ、しゃに構える。ガントレットと鞘についた霊神珠れいこうじゅが蒼く輝き出す。輝きは増していき鞘全体を光が覆う。そのとき、


「ハァァッ!」


 と叫びながら、勢いよく抜刀する。


 抜かれた刀から放たれた蒼い光の斬撃が飛び、離れた枯れ木を斜めに切り裂く。その斬撃はさらに奥にある巨大な岩をも切り裂き、斬撃の形の穴を穿うがった。斬られた木が倒れて、ドーン! と轟音を立てる。


「な! 」


 蓮が驚いていると、刀を鞘に戻し、天咲は蓮につき返す。


「これが刀で使える霊神れいこう居合技・蒼月そうげつよ」


「すごい……。こんなことができるなんて」


「今のあなたなら使えるはずよ。役立ててね」


 刀を受け取り、腰袋に鞘を取り付ける。愛菜が言った通り、この人と戦って無駄だろうと痛感させられた。



 これで準備は整ったと言わんばかりに、天咲をこちらに微笑み、手を振りながら言う。


「じゃぁ、気を抜かずに頑張ってきてね」


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輪廻転生は甘くない! ~自殺先は地獄です~ 二神 秀 @twoonsky

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