§ 2―8 咎人のなれの果て



「……あの化け物たちは何なんだ? 」


 蓮は気になっていた得体の知れない怪物たちのことを尋ねる。


「ん~……。まぁ、言ってもいっか。あれは本当の地獄に送られた罪人の霊魂よ。ここでは、無人の精神を浄化するために、えて現世の化け物の姿にしてるの」


「! あいつらは……元は……人間……だったとでも言うのか? 」


「そう。現世で罪を犯した咎人とがびとよ」


 蓮の鼓動が高鳴る。


「あなたたちが相手をした、ゴブリンたちは主に窃盗せっとうのような軽犯罪を繰り返した者たちかな。あの一つ目のサイクロプスは、たしか現世ではプロレスラーで、試合中に相手を殺してしまった人間よ」


「じゃぁ、おれは……人間を殺していた……ということなのか……」


「そうなるわね。彼らの姿はもっともみにくい心が顕在けんざい化したものなの。この無人むびと界にいる咎人たちは特別に無人むびとのために地獄から連れてこられた者たちで、彼らを殺すことは浄化することになるから、あなたたちは気にまないでね」


「そんな……、そんな簡単に割り切れるわけがない! 人を殺してたんだぞ! 」


「じゃぁ、いいのよ? 先に進まなくても。実際にこの神殿の外で、ひっそりと過ごしてる人もいるしね。ちなみに、ミノタウロスみたいに殺しにくる咎人もいないから安心して」


 蓮は、隣に座る白い髪の女の子をちらっと見る。彼女はおそらく、何があっても先に進もうとするだろう。


 そして、蓮は彼女への身勝手な決意を再確認する。割り切れない感情を無理やり押し殺して……。


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