一人ぼっちで歩く星
高黄森哉
独りぼっち
地平線が曲線に見える、小さな小さな星の上、私は一人で歩く、大きなおなかをさすりながら。図鑑で見た犬もいない、猫もいない、鳥もいない、生物は畑の植物だけな、この星。はて、彼らはどこにいるのだろう、きっと、どこかにはいるのだろう。だって、じゃないと、図鑑に載せられない。
歩いて歩いて、来た大地、積み上げられた骨の山。どれも、同じの人の骨。その一番前、死んでる私のお母さん。私は見つけた、昔、泣きながら探して探して、やっと見つけた。
ぬいぐるみを抱き寄せる。私が子供の雨の日、お母さんは、行ってしまった。私が寂しくないように、ぬいぐるみを縫ってくれた。今も大事にしている。
お墓参りを追えて家に帰る。小さな小さな布家、裁縫テント、その真ん中、
生き物図鑑を開いて、この暇を潰す。どこかに、いる生き物たち、もしも会ったらを想像する。幻想を近くに創造して遊ぶ。家の中、ヒョウを抱えて運ぶ、お風呂で水を浴びさせる。
空想遊びで疲れたの。私は畑に行く。大きな大きな鍬を担いで、土を耕す。容易くないその仕事、大人に成れば、苦にならないのだろうか。
金属のさきっぽが、ガツン、かたいものに当たる。それは、缶カンだった。中を開くと、欠けた図鑑の続き。
・人間『遺伝子組み換え#2021番』
人口爆発により、住めなくなった地球を脱出するため、様々な遺伝子的改良を施された人類は、遥か彼方、宇宙へと放出された。この2021番は、そんな人類開発時代で、初めての単為生殖型である。クローン元が、少女のため遺伝子年齢が低く、このため寿命が少ない。個体数増加による自滅を避けることが狙いである。また、遺伝子の適応速度は、世代交代の速さに比例するので、単為生殖型の欠点である進化の鈍足さを、打ち消すことになる。また、低年齢出産を補うため成熟の速度を高めている。
難しい、家に帰って、辞書で訳そう。小石の小道、台形を回転させたのが、中心の家。そこから張り出した布の屋根は広い。
赤の布の屋根の下、ランプを灯す。もうすっかり、辺りは暗く夜。私は、今夜は眠らない。この一週間は起きて、次の一週間、寝る。あと二時間で夜が明ける。
お腹をさすると、何かが動く。これが何かは分からない。でもなぜか、私な気がする。当然、私なんだろう。なんせ私の一部なんだから。
星の流れる夜空を見上げると、月が鮮やかに見つめてくる。私は見つめ返す。天の大部分を埋める、オレンジの瞳は、お腹みたいに膨れてる。
一人ぼっちで歩く星 高黄森哉 @kamikawa2001
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