作者さんの実体験をもとにした、お仕事私小説。
大型自転車屋チェーン店の店長さんとして働く作者さんは、朝日を見るのもしんどいほどのお疲れモード。
そこに、日本一周をしたいと自転車を求めてやってくる一人の青年。
その壮大な夢を馬鹿にすることなく、真摯に対応する作者さん。
自転車店の店内の雰囲気や作業、丁寧な描写がすばらしく、作者さんの心の内が伝わりとても共感できました。
客と店員というわずかな関わり合いの中でも、人とのつながりがあることを思い出し少し前を向いて進もうとする作者さんに、読者は勇気をもらえると思います。私はなんだか胸熱でホロリとしてしまいました。ぜひ読んで欲しいお話です。

私自身が某自転車小売店で1年と少し働いていたからでしょうか。すごく、現実感をもって読むことができました。
たいてい仕事はやるせない感情7割、たまーに感じる嬉しさ2割、そしてこのお話のような「誰かのためになったのかな？」という自己肯定感1割な気がします。

ほんのたまーに、ですけど働いて社会に関わってよかったな、と感じるときがあります。
その巡り合せの瞬間をこの短編で見ることができた気分です。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（562文字）

繁忙期真っ只中の疲労困憊の時、冬の寒さが染み入る12月中旬にこの作品に出会えたことを、熱を分け与えてもらったことを感謝します。

作品の内容自体に元気を貰いました。
また、緩やかで静謐な流れを感じさせる文章に自身が調律されていくかのような安心感を覚えました。

この作品のお蔭で、仕事が頑張れそうです。

さくっと読めて、心地よい読後感を味わえます。
個人的には仕事帰りに読むのがおすすめです。