&α
ぶつかる。
跳ね返る。
転がる。
「おまえばかじゃねえの?」
ひと。男のひと。
「自分から轢かれに行くばかがどこにいるってんだよ。死ぬ気か?」
生きてる。
わたしも。
このひとも。
「いきてる」
「生きてるよ。あぶねえあぶねえ。ほら立てるか。というか立て。俺はここにいるとまずいんだ」
促されて立ち上がる。
「あ?」
あれ。
「なんだおまえ」
「覚えて、ませんか?」
そっか。予知夢だから。
わたしは知ってても、このひとはわたしを知らないのか。
「あの。初めまして」
「そういうのいいから。あの。手を離してくんねえかな。逃げられないんだけど」
逃がさない。
「あなたが生きていてくれて、嬉しいです」
「さっきおまえ車に突っ込んでいったくせに何言ってんだ」
よかった。仲良くなれそう。
とりあえず、手を握ったまま、その場を後にした。
握っていた手が、ちょっと、震えてた。
「まだ、死にたいですか?」
「なんで?」
なぜ知ってるか、という問いかけ。
「まだ、死にたいですか?」
「死にたいよ。できれば、なるべく、はやく」
「そうですか」
無理か。そりゃそうか。初対面だし。でもまずは、仲良くなるところから。
ただの予知夢 春嵐 @aiot3110
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます