第5回 「日本橋の新井マイでも連れてこい!」
前回、板野作品においては、AKB48(グループ)に相当するアイドルグループは「秋葉原エイトミリオン(グループ)」という名称であると述べましたが、実はこの世界には、
しかし、アイドル関連の作品を当時愛読して下さっていた方でも、その名称まではご存じない方が多いかもしれません。
板野作品における「○○坂46」は「○○橋シックスセンシズ」といいます。ですが、その名称は『IDOLIZE』や『NAVY★IDOL』の作中には登場せず、僅かに「橋」や「日本橋」という言葉が出てくるだけです。その設定経緯を順を追ってお話しましょう。
坂道シリーズにあたる「橋シリーズ」の存在が初めて登場したのは、2018年8月に公開した、『IDOLIZE』の「7th Single>Track.03. 試練の時間」(https://kakuyomu.jp/works/16816700428506924603/episodes/16816700428507133784)でのことです。
このエピソードにて、主人公の
「ゴリ押しにも程があるっていうか、あんなのが選抜に居座ってるから本店は落ち目とか言われるんだよ。ユイちゃんが本店入りしてセンターやった方が絶対売れるって。……あ、でもそうか、落ち目のエイトミリオンなんか今更入りたくないか。そりゃそうだよな。じゃ、
……要は、この男性は結依の背負ったハンディキャップを知らず、勝手に彼女を買いかぶりまくっているわけですが、ここで何の説明もなく出てくる「
やはり説明なしに出てくる
本作で「橋」の存在に言及されるのは、このただ一回だけです。
次にこの言葉が板野作品に登場するのは、2019年4月公開の『NAVY★IDOL』の「第11話 私達の理由(3)」(https://kakuyomu.jp/works/16816700428531372120/episodes/16816700428534452498)において、
ナナを痛めつけながら、草加はこんなことを言います。
「お前みたいな顔も知らねえ雑魚メン、この俺が相手にするかよ! 俺に捧げ物したきゃなぁ、日本橋の新井マイでも連れてこい!」
ここでもやはり、「日本橋」がどんな存在で、「新井マイ」が何者なのかは何も説明していません。わからなくても話に支障はないので、敢えて流しているのです。勘のいい方なら「乃木坂の白石麻衣」と読み替えてくれるかな、という程度の計算です。
本作の舞台は2016年で、当時の乃木坂では
さて、こうして僅かな言及のみに終わったはずの「橋シリーズ」ですが、実はその後、大きくスポットライトが当たる予定が立ったことがありました。
2019年6月頃のことですが、当時私の作品を熱心に読んでくれていて、また自身でもアイドル小説を書かれていたY氏という若い作者さんが、坂道シリーズを主題とした『IDOLIZE』のサイドストーリーを書きたいと申し出てくれていたのです。
二次創作歓迎派の私としては願ってもない話ですから、彼と綿密に相談を重ね、作品の仔細を詰めていきました。その過程で、これまで「橋」だの「日本橋」だのとしか書いていなかった、「橋シリーズ」の正式なグループ名を決める必要が生じました。
それにあたり、「○○橋」の部分は実在の橋から取ればいいとして、難儀したのは「46」にあたる横文字の部分でした。この世界では「48」が「エイトミリオン」になっているのですから、「46」の方も何か「シックス」を含む名称にしたいところです。しかも、エイトミリオンが「八百万の神」と掛けている以上、シックスなんちゃらの方も、既存の慣用句と掛けた名称となるのが望ましいでしょう。
ここで、私がいくつか出した案の中から、「第六感」と掛けた「シックスセンシズ」をY氏が気に入ったため、このアイドルユニバースにおける橋シリーズの正式名称は「○○橋シックスセンシズ」と決まりました。
そして、現実の乃木坂46、
特に「聖橋」は我ながら得心のネーミングでした。かくして、『IDOLIZE side:B』(勿論Bridgeと掛かっています)の企画は順調に動き出したはずでした。
しかし、私の馴染みのイラストレーターさんにお願いして、各々の作品のヒロインが並んだグラビアイラスト(https://kakuyomu.jp/users/itano_or_banno/news/16816700428579799691)まで制作・公開していたにも関わらず、Y氏はNGT48事件のショックが尾を引いたとかで筆を置いてしまい、この作品が実現することはありませんでした。
まあ、私もその半年後にカクヨムを退会してしまったので、人のことは言えないでしょう。
こうして、幻と消えたかと思われたシックスセンシズの物語ですが、実は、同年8月に執筆・公開した『あやかし特区のワーキンガールズ!』(https://kakuyomu.jp/my/works/16816700428533464833)にて、小道具として少しだけ名前が出ていたことがありました。
同作の「1-7 名前と存在」(https://kakuyomu.jp/works/16816700428533464833/episodes/16816700428533536304)にて、ドルオタの
「
「はぁ。なんですか、それ」
「ご存知ありませんか、例の日本橋シックスセンシズの姉妹グループでね。クールな世界観が特徴の後楽橋に対して、アンダーの方はハッピー感を前面に出してたんですが、本体のおまけ扱いではなかなか外部への知名度が上がらないままでね。こないだ、新潟出身の子がひとり『あかし宮殿』に出てましたが……」
「……あぁ。なんかそれ、見た気がします」
これはそのまま、当時の日向坂46の状況を述べたものですが、結局、これが板野作品で「シックスセンシズ」の名前が出た唯一の場面となりました。
「改称を切っ掛けに、彼女達は伸びていくと思いますよ」
……2021年現在、日向坂は独立元の欅坂をも大いに上回る人気を獲得するに至っています。板野のアイドル予言が珍しく当たったケースでした。
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