最終話 ざ・お~でぃなり~ぱ~そん
「ついに我々は河童の正体を突き止めたわけだが…」
生徒会室で秋季がミーティングを開いている。
ホワイトボードには『未知との遭遇』とデカデカと書かれている。
「河童が宇宙からの移民だったとは俺も驚いたぜ」
夏男が椅子をカタンカタンと傾かせながら目を閉じ語る。
「冬華、次は雪男を探すです‼」
「まぁ、夏は河童で冬は雪男ですの?」
「河童よりは、いそうな気はするけどな」
青海がプールで泳ぐ河童を見ながら存在の可能性を脳内で模索している。
「個体差もあるんですよね、甲羅があったり無かったり」
「オスメスの概念もないとか言ってたわね、先生、そんなつまらない進化したくないわ」
「老化すると脱皮して若返るってホントですかね? 未来にもいたってことですよね、僕は知らないけど」
未来人向井くん、未来を過去形で語るという不思議な感覚。
「ロブスターと同じです‼ 脱皮して新品になるです‼」
「いつになく賢いな冬華くん‼ 次回のテーマは不死についてで決まりだな‼」
「人類の不死化っていえば、ゾンビもそうなんでしょうかね?」
小太郎、廊下でウロウロしているゾンビを眺め考える。
「う~ん…」
一同、真剣に悩みだしたのでミーティングは終了となった。
食堂でチャーハンを食べ、小太郎は屋上へ向かった。
屋上からプールの河童を眺め、街でフラフラしているゾンビを眺める。
「慣れている?」
ボソッと呟くとゾワッと鳥肌がたった。
この異常な世界に慣れている自分が怖かった。
「ん?どうしたんだ佐藤君」
「田中さん」
「ハハハッ、校長って呼んで欲しいな」
「はぁ…」
小太郎は田中さんに少しだけ親近感を持っている。
たぶん、こんな世界じゃなかったらと考えると自分のような人間は平々凡々と人生を終えたであろうと思っている。
ゾンビ化しないという事実、それだけがこの世界における特別ではあるのだが、だからといって何かを成せるわけではない。
それは自分が、この世界においても特別な存在ではないということだ。
いつになくシリアスな自分に酔いだした小太郎。
男前な雰囲気でフッと自嘲気味に笑ってみたりする。
古の大魔法使いに言わせれば、『フッ』ってやつは神に選ばれた超絶美形主人公しか許されないのだそうだ。
しばし屋上からプールで河童と遊ぶ冬華を眺める小太郎。
「雪が降ってきたら雪男か…」
それもいいかと思う小太郎。
そんな男前な雰囲気を醸し出していたら肩口に強烈な痛みを感じた。
ゾンビに咬まれていたのである。
「……痛ぇ……」
超絶美形主人公でもないのに『フッ』がいけなかった…。
ゾンビにこそならないがTHE凡人なのが小太郎である。
噛みつくゾンビを振り払い、小太郎は考える。
今夜は、冷やし中華にしよう。
お昼は炒飯だったから…。
汗を拭って校舎に戻る小太郎。
そんな日常を過ごしながら、冬になったら北国へ行くことになるのだろう…。
「心の底から…行きたくない…」
きっと雪山で遭難に近いキャンプを強いられるような気がするから…。
未来を予見するなどという便利な能力なんざ持ち合わせていない小太郎、そんな光景がハッキリと目に浮かぶのだ。
「今度こそ…生死を彷徨うかもしれない…」
そんな世界で生きる者達へ…ドンマイ‼
『続・ ゾンビが徘徊する世界で、こんな能力を持ってみたって、どうしようもねぇ…』完
続・ ゾンビが徘徊する世界で、こんな能力を持ってみたって、どうしようもねぇ… 桜雪 @sakurayuki
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