第89話 りまいんず・あ・みすてり~
小太郎は話を続けた。
隙あれば『カエルだけに?』にめげずに…。
「彼らにとって、この沼は聖地のようなものでして…」
「ソコに突っ込んだわけか…ソレで襲ってきたんだな河童」
「いや…襲ってきたというか…その流れで襲ったのは僕らの方…」
チラッと冬華を見る小太郎。
久しぶりに見た人間の観察を行っていた河童から供物強奪の一報を受け、多少は敵意があったことは否めない。
「ん? 供物とは?」
夏男が小太郎に尋ねた。
「アンタが持ってきたゾンビが作ってた野菜だよ‼」
「……ほ~ぅ…では、この争いの発端は俺のせいだとでも?」
開き直る夏男。
「はぁ~っ…人類ゾンビ化の原因も、このエロ眼鏡のような気がしてきましたわ」
大きなため息を吐き、軽蔑とか侮蔑とか、そんな目で夏男をジロッと見ている。
「すると農家さんゾンビは、河童のために野菜を育てているということですか?」
まともに理解を示した未来人向井くんの存在に初めて安心感を覚える小太郎。
ゾンビの存在で異常事態なのに、未来人がいて、河童がいる。
そのうえ河童は宇宙から来たのだと言うではないか…。
「この惑星は、何がどうなっているのやら…僕の話はここまでです。ご清聴ありがとうございました」
頭を下げる小太郎。
「で?」
酒の抜けた立花 桔梗が簡潔に一言で聞き返してきた。
「ん?」
小太郎、思わず一言で疑問を疑問で返す。
「だから、アレどうなるの?」
立花 桔梗、ビシッと沼の河童を指さす。
「小太郎…何匹かプールで飼っちゃダメですか?」
冬華は河童飼育を諦めていない。
「ちなみに河童一族は皆『蛙』姓を名乗るそうです。桃太郎は長に引き継がれる名だそうです」
小太郎からのPSであった。
「で?」
再び、立花 桔梗が簡潔に一言で聞き返してきた。
「見なかったことにはならないでしょうか?」
立花 桔梗から目を逸らす様に答える小太郎。
「それは河童の希望なのかしら?」
「はい、彼らは静かに暮らしたいだけのようで…」
「暮らすって普段どこにるのよアレ」
立花 桔梗、ビシッと沼の河童を指さす。
「沼か…池か…川とかじゃないんでしょうか?」
「ハッ‼ 」
冬華が何か閃いた。
トトトトッと河童の方へ走っていき何事か話している。
戻ってきた冬華はニコニコであった。
夕方までかかり、バスを引き上げてもらった人類は、そこらから調達してきたゾンビに運転させ街へ戻ったのである。
小太郎は思った。
「野菜の話しかしなかったけど…ゾンビを食ったよな…確か」
翌日以降、学校のプールでは時折、河童が遊ぶ光景が見られたという。
冬華が使用許可を出したらしい。
今日も冬華に言われて、プールに夏野菜を浮かべる青海と向井くんの姿がある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます