大きなマスクで顔を隠し、「私キレイ……?」と尋ねてからマスクを外して襲いかかる口裂け女。何十年も前から伝わる有名な都市伝説だが、近年は口裂け女業界にある問題が起こっている……今は誰もがマスクをしているのだ! 季節外れのマスクで顔を隠すという口裂け女の神秘性がすっかり失われている!
そんな誰もがマスクをする時代に口裂け女を描いたのが本作品。本作の口裂け女はただの口裂け女ではない。口裂け女に噛まれた者は感染して口裂け女あるいは口裂け男になるのである。ゾンビのようなものなのだが、ゾンビと違って皆マスクをしているせいで誰が感染したのかわからない!
かくして、暗躍する口裂け女によって街はパニックに陥り、その存在を知った中学生のロエリとレイン(どちらも本名)は口裂け女にされた友人を救うべく心霊ユーチューバー(教師)とともに奮闘する。
じわじわと街が侵略されている恐怖はあるのだけど、その一方で登場人物が妙にポジティブでピンチになっても明るい感じで会話をかわしていくので怖くなりすぎずに楽しく読める一作。ピンチになったらホームセンターに逃げ込んで武器を調達するというホラーのお約束を踏襲しているのも楽しい。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)