第3話
次の日。俺が教室に行くといつもと同じようにクラスメイトは会話を中断して嫌悪感マシマシの視線を俺に向ける。
俺はそれを無視して自分の机の横にスクールバックを掛けて椅子に座り、本を開く。
「おはよう!天川君」
「おはよう。二ノ瀬」
いつも通りの朝の挨拶。
けれど、少し気になった点が。
「なんか今日二ノ瀬の荷物多くないか?なにか今日授業で持ってこいって言われた参考書とか、授業変更で体育になったとかってあるっけ?」
「ううん、ないよ。あのね、今日は2人分のお弁当を作ってきたんだ〜!ちなみに手作りだよ?」
「二人分ってことは、朝早くから準備したってことだろ?すごいな」
「でしょ!しかもほとんど手作り!だから、天川君。お昼、私と一緒に食べよ?」
イマ、ナンテイッタ?
聞き間違いじゃなければ、お昼を一緒に食べようって言ったよな?
「自惚れだったらすまない、もしかして俺のために作ってきたってことか?」
「そうだね」
「冗談とかドッキリじゃなくて?」
「うん」
肯定しちゃったよ。しかも即答。
う~ん、そもそも俺たちそんなに親しい仲だっけ?博愛主義者の二ノ瀬のことだ、クラス内で嫌われている俺に気遣って話しかけているだけだろ?
それに、俺、思うんだけどさ、そうゆうのって付き合ってる人同士とかがやるものじゃないのか?
「どうしたの?なにか問題でもあった?苦手なものがあったら私が食べるから大丈夫だよ?」
「基本的には苦手な食べ物はないから大丈夫だ。ただ、そういうのは好きな人同士でやった方がいいと思うぞ?わざわざ俺みたいなモブとやらないほうがいい」
「つまり、私が作ったお弁当は食べられない。そういうことを言いたいの?」
「え?」
なにこれ。さっきまで優しそうな雰囲気だったのに、急に怖くなったんだが。
もしかして、地雷を踏んだか?
「食堂の、しかも知らないおばさんが作った料理は毎日かかさず食べてるのにねー?おかしいよねー?そうは思わない?」
「そ、それとこれとは話は違うだろうが……」
「……へぇ、ふぅ〜ん。そんなこと言うんだ」
「ひえっ!?」
これはやばい。完全にやらかした。
だって、顔は笑ってるのに目にハイライトがないんだよ!?
「えっと、その……。食べないとは一言も言ってないんだけど。あの、あくまで忠告?みたいな?」
「なーんだ!そう言うことかー。ごめんね、私勝手に誤解しちゃってた」
「そ、そうか。誤解が解けてなによりだよ。うん」
いつもの二ノ瀬に戻った。よかった。うん。
そう思い安堵していると、二ノ瀬があっ、そうだ、と口を開く。
「なんだ?」
「これからは一緒に過ごそうよ」
「えっと、どうして?」
「クラスメイトに話しかけても無視されるでしょ?それに私さ、お昼も天川君と話したいんだよね〜」
断りたいが、さっきのアレがまた発動してしまうと思い、俺は首を縦に振ると二ノ瀬は満足そうな表情を俺に向け、最近発売した小説について楽しそうに、子供が親に買ってもらった玩具を自慢するかのように語り始める。
俺はそれを相槌を打ちながら聞く。
だが、そんな穏やかな日常が二ノ瀬の手によって終わりを迎えようとしていることなど、俺は知る由もなかった。
俺みたいな嫌われ者のモブに優しくしてくれる隣の席の女の子の本性を知らない 猫と犬が好き @nikuoisi
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