第2話

 本日の授業が終了し、俺が帰った後の放課後。


「お前、誰だよ。どうしてここに呼び出した?俺が彼女持ちだって言うことを知っているだろ?あ~あ、これからデートだっていうのに」

「ん〜?どうして言わなきゃいけないの?どうせわかることなのに?」


 基本的に誰も来ない文化棟3階にある、何故か施錠されていない教室の中で幼馴染のイケメンこと風雅あゆむと二ノ瀬が向かい合っている。


「ああ、わかった。もしかしてずっと前から好きだったってやつか?俺が付き合ったせいで拗らせてメンヘラになったのか?そうでもしないとこんなことしないもんなぁ!マジでやめろよ!迷惑なんだよお前みたいなやつは!」


「いつ、どこで、誰が私がお前のことを好きって言ったんだよ。自惚れるなよ?」


 二ノ瀬がギロリと風雅を睨みつけ殺気を込めて言い放つ。すると風雅は蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。


「本当に不快だよ。気持ち悪い。あのさ、私がやるはずだった恭弥をクラス内で孤立させる、ということをやったよね?だからすごくむかついたし、腸が煮えくり返りそうだった。けどね?その後、疎遠になったよね?だから、恭弥との約束を破ったお前を不本意だけど不問にしたの。でもさ、今日のはダメだよね?」


「なんだよお前は!?約束を破ったこと、あいつにメッセージを送ったことをどうして知っているんだよ!?俺以外知らないはずなのに!」


「どうしてって?そりゃ好きな人の情報を知りたいのはどんな人間も同じでしょ?だから私なりに頑張ったの。その結果、偶然知っただけだよ?」


「……偶然、か」


「そう。偶然、ね」


 風雅はその時やっと理解した。


 いや、強制的に理解わからせられたのだ。


 俺が軽率にやった行為は目の前の女の子を怒らせるのには十分なほど、禁忌的な行為だということを。


「で?まだ続けるの?これ。私的には時間の無駄だし無価値に等しいから早く終わらせたいし、明日は恭弥にサプライズでお弁当を作りたいから材料を買いに行きたいんだよね。お前も早く彼女とデートしたいでしょ?」


「……わかった。俺はもう恭弥に関わらないし、恭弥に関するものは全部消す。もちろん、俺の彼女にもそうするように言う。これでいいだろ?」


「最初からそう言えば早く解放できたのに。彼女と長くデートできたのにね。ここまでやらないと自分が置かれている立場が分からないとか、物分かり悪いね。お前の彼女が可哀そうだよ」


「……すまん」


「やめてくれる?お前の謝罪なんて要求してないし、価値がないうえに不快だから」


 俺は二ノ瀬が風雅とこんなことをしているなど知る由もなかった。

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