俺みたいな嫌われ者のモブに優しくしてくれる隣の席の女の子の本性を知らない

猫と犬が好き

第1話

 高校に入学して間もない頃、俺はイケメンの幼馴染こと風雅ふうがあゆむに相談を持ち掛けられた。


 その内容は、俺と風雅の幼馴染の美人な女の子が好きだと。告白して俺たちが付き合えるならどんな手を使ってもいい。誰にも言わないし言いふらさないから、と。


 俺はそれを引き受け、依頼主のために頑張ったんだ。これはモブにしかできないことだから。


 でも、どんなに俺が膳立てをしてやっても二人の仲は進展することはなく、風雅は俺に疑いの目を向けるようになっていた。


 だから俺は――

『貴方のことが好きです。こんななよなよしたイケメンよりも幸せにできます。いや、します。だから付き合ってください』

 ――俺にしかできない方法で、最低で最悪な方法で最後にして最高のお膳立てをしてやったんだ。


 ※※※


 高校に入学して二年目の春。


 俺こと天川恭弥あまがわきょうやはいつも通り教室に行くと、今まで大きな声で楽しそうに話していた人たちが俺を一斉に睨みつける。


 きっと、一年生のあの出来事がまだ尾を引いているのだろう。


 いい加減気が付いてほしいものだよ。モブに構っている暇があるのなら、自分のことを気にしたほうがいいと。


 俺はそんなことを思いながら自分の席に座り、読書をしようと本をスクールバックから出そうとしたその時、肩を叩かれる。


「おはよ!天川君」

「おはよう。二ノ瀬」


 朝の挨拶をするのは隣の席の二ノ瀬凪咲にのせなぎさ。艶やかな黒髪、そしてシミひとつない肌が特徴的な女の子。


 趣味が俺と同じく読書だからだろうか、あるいは隣の席だからだろうか、そうでなければ博愛主義者だからだろうか、理由はわからないが、こんな嫌われ者のモブに朝の挨拶をしてくれる数少ないクラスメイトだ。


「そう言えば天川君からコーヒーの匂いがするね」

「ん?ああ、駅前に新しくできたコーヒー専門店で朝コーヒーしてきたんだよ。開店セールの時に貰った券が明日まででな。不快だったか?」

「ううん。実は私も今日コーヒー飲んできたんだぁ。まあ、カフェオレだけどね」


 気が合うね、と笑いながら言う二ノ瀬。

 はっきり言って可愛いです。はい。


「ちなみに天川君はなに飲んだの?」

「ブラックコーヒー。酸味があってうまいんだよね」

「えー!すごいね!私苦くて飲めないよ~」


 そんな会話をしていると、俺の机の上に置いてあるスマホが振動。

 まぁ、どうせソシャゲのスタミナが回復したよ♪とか、せいぜい今日の天気とかだろ。よって無視。


「えっと……通知がきたようだけど?」

「ん?あー、気にしなくていいよ」

「ダメだよ!友達からだったらどうするの?」


 俺にメッセージを送ってくる友達なんていたとしても、一年前に同じ学校にいるものの疎遠になったイケメンの幼馴染ぐらいなもの。けれど、忠告には従っておこう。

 俺はそう思い通知を見る。すると自然と深いため息を吐いた。


「ん?どうしたの?」

「疎遠になった、隣のクラスの幼馴染のイケメンこと風雅からだった」

「……ふぅ〜ん。ちなみにどんな内容?」

「彼女への誕生日プレゼントが決まらないからアドバイスしてくれ、だってよ」

「(一方的に約束を破ったくせに、まだ頼るんだね)」

「何か言ったか?」

「ううん、何でもない」


 その後、俺たちは担任の先生が来るまでたわいもない話をして朝のSHR前の時間を過ごした。

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