オジサンに死を
白川津 中々
■
近未来。
男から人権がなくなり、中年男子はオジサンとしてカテゴライズされ人類の敵となった。
「いたぞ! 加齢臭だ! 殺せ!」
「そんな! 私はただ生きてるだけで何も!」
「おじさんに人権はない! 死すべし!」
「ぐえー!」
死んだ。
悍ましき暴行であるがしかし、この近未来においては当たり前の、日常の風景そのものであった。
ハゲ、中年太り、加齢臭。これらは処分の対象であった。男性は三十を迎えるとオーデコロンの義務化に加え、実費でのAGA治療(保険適用外)やスタイルの意地が求められるなど多くの枷が鎖付られ、年齢による行動制限も実施されていた。また、条件次第では強制的な去勢も認められており、男性の人権は悉く蹂躙されていた。
こうした過剰な男性排除運動が行われるようになったのは過去に横行したオジサン構文やセクハラなどの暴挙が要因である。一部の中年男性のインモラルが男性そのものの価値を貶め、男という被差別対象を生み出したのだ。
少数のオジサンによる反社会的行動が男性全てに対する迫害を産んでしまった時代。その哀れに涙を流す者はおらず、女は優雅に暮らし、男を嘲笑している。いつの時代かこの差別が社会問題となって、立場が逆転する時もくるだろうが、今虐げられている男達の血が止まる事はない。歴史とはそういうものである。
「ぐえー!」
男がまた死んだ。
死体の山が築かれる世界。しかし死体が積み重なっていく事自体は如何なる時代においても同じ。ただ死体の種類が変わるだけだ。
オジサンに死を 白川津 中々 @taka1212384
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