後悔

─8年前─


公園の砂場に子供が二人

「連!暗くなったしもう帰ろうよー」

「杏子だけ先に帰ってればいいじゃん」

「でもひとりじゃ危ないし…」

「しつこいよ!まだ5時のチャイムなってないから俺は帰んないからな!」

「うん…そうだよね…じゃあ帰るね…」


そう言って杏子は行ってしまった。

何故か後ろ姿から目が離せない。

「勝手にしろよ…」

……。

(でも…言いすぎたかな)

また明日謝ろう。

だって明日また会えるんだし。


そうして砂場でしばらく遊んでいると町中に5時のチャイムが鳴り響いた。

「帰ろうかな…」

そうつぶやいて帰路に着く。

(やっぱり一人で帰るのは寂しいな…)

少し悲しくなった。

一緒に帰った方が良かったかな。

そんな事を考えてるうちに家に着いてしまった。


「ただいまー」

「おかえりー」

いつも通りお母さんが出迎えてくれる。

「ねぇ連。杏子ちゃん知らない?まだお家に帰ってないらしいんだけど。確か二人で遊びに行ってたわよね。」

杏子が家に帰っていない?

そんなはずはない。

だって杏子は自分よりも30分以上前に先に帰ったはず。

(まぁどうせゆっくり帰ってるだけだろ…)

そうだ。そうに違いない。いや、そうであって欲しいだろうか。

「俺より先に帰ったよ。寄り道でもしてんじゃないの?」

「そう…あまり寄り道するような子じゃないと思うんだけど…。

とりあえず神凪さんに伝えておくわ。」

そう言ってお母さんは携帯を取りに行ってしまった。


12月11日


朝から何か騒がしい。

リビングに降りてみる。

お父さんとお母さんが何やらテレビを見て話しているようだ。

空気が重い。

「お父さん、お母さん、おはよう」

「「おはよう連」」

ここまではいつも通りの朝だ。

このままいつも通りの朝であって欲しかった。

「ねぇ連…言いにくいんだけど…」

お母さんが話しかけてくる。

嫌だ…嫌だよ…





その日から杏子とは会えなくなった。


────────────────────


「事件…か…」

だがこの世界線では杏子は生きている。

もしかしたら事件なんて起こってないのではないか。そんな淡い期待を抱く。


2013年12月10日殺人事件 検索


検索ボタンを押すとネットニュースが羅列される。

「あった…」

記事には『神代市児童殺害事件』とある。

事件の名前は変わっていないようだ。

その記事を開いてみる。

『12月10日神代市に住む小学4年生のIさんが死体になって路上で発見された。

事件の発端は路上に子供が倒れているという通報だった。

警察は殺人事件として捜査を開始するもいまだに犯人逮捕までたどり着けていない。』

(全然変わってないじゃねぇか…)

変わっているところと言ったら被害者くらいだ。


「パラレルワールドくんさぁ…」


パラレルワールドだからといってそう上手くはいかないようだ。







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