間違い探し

『どうやら俺は強盗に刺されてパラレルワールドに来てしまったらしい。

しかもこっちの世界線では8年前に死んだ杏子が生きているらしい。

8年前の事件についてよく調べておく必要がありそうだ。

元いた世界線と違う所が他にもあると思うので今後調べていきたいと思う。』


(…こんなところか。)

1年前から日課にしている日記をスマホのメモにつける。

母親はもう帰って今は夜9時。母親によると杏子は明日もお見舞いに来ると言っていたらしい。

(8年も経ったしさすがに変わってるだろうな。

もしかしたら超絶美少女になってたり!?)

そんな期待に胸を膨らませずにはいられない。だってパラレルワールドだし。


だがやらなければいけないことがある。

「日記を読み返してみるか…」

そう、間違い探しだ。

現に8年前に死んだはずの人が生きているのだし何かしらあってもおかしくは無い。

「彼女が出来ているかもしれないし、宝くじに当たっている可能性だってあるしな!」

なんかワクワクしてきた。

ニヤニヤしながら日記のフォルダを開いて適当な日付のものをタップする。


『2020年12月25日

今日はクリスマス。

俺、杏子、良一、風香の4人で俺の家でクリスマスパーティーを開いた。

みんなで買ってきたお菓子やフライドチキンなどをつまみながら騒ぐだけのパーティーだったが、来年は出来ないかもしれないと考えると特別なパーティーのように感じた。』


「え…?」

なにこれ。

クリスマスパーティー?

「いや待て一旦整理しよう」

(良一と風香は確か俺のクラスのガチ陽キャだったはず。なんでど陰キャの俺がそんなやつと一緒に…)

あっ。

気づいちゃっかも。

なぜ俺が陽キャと一緒にいたのか。


「ズバリ!俺が陽キャになっているから!」


別におかしな話ではない。

杏子が生きていることによって人間関係が変化してる。

ただそれだけ。

(もしかしたら性格も変わってるかもな…)

これもありえる。

小さい頃の出来事はその後の人格形成に大きな影響を与えるって言うもんな!

まぁその時もう10歳だけど…。


(そうなると他にも大きく変わってそうだな…)

そう思いメモを閉じて写真フォルダにいってみることにする。

その時ホームボタンを押して気づいた。

「あれ…壁紙違うな」

あまり意識していなかったせいか気づいていなかったが、壁紙がアニメキャラではなくオシャレな風景画になっていた。


嫌な予感がする。

急いで写真を確認してみる。

(残っててくれよ…)

「確か…このフォルダに…」

フォルダをタップする。

だが、

残念ながら予感が当たってしまった。

そこにあるはずのものがなくなっていた。


「おい…嘘だろ……hixivで集めた俺の…俺の……推しの画像がァァァァァァァァ!!!!」


(こんなにも違うものなのか…

まさか俺がオタクになってないとかそんなんありえるのかよ…)

この世界線の自分にガッカリだ。

さすがに変わりすぎだ。

自分にとって杏子がどれほど大きい存在だったのかを感じずにはいられない。


だがこれでわかった。

これからの生活は一筋縄ではいかないと。



(そうえば何か調べなきゃいけないことがあったような…?)



「あ…事件…」

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