もう一人の自分という可能性
バブみ道日丿宮組
お題:自分の中の絶望 制限時間:15分
もう一人の自分という可能性
もう一人の自分というのは、いかようなものであろうか。どうして生まれてしまうのか。
「……うーん」
毎朝違うところで寝ていたり、知らない人が隣で寝てたり……を日常にするのは不都合があるんじゃないかとか。
「よくわからない」
記憶がない。
交流をさほど重要視してない私は、これといって友だちと呼べる人はいない。親とも疎遠だし、姉とだって年に数えないほどの会話をする程度だ。
だからこそ、今の状況は本当によくわからない。
自分が女たらしであったという自覚はないし、そんなことをするような人間として生きてきたわけじゃない。
「……」
とりあえず、誰なのかを調べるためにベッドの横に脱ぎ散らかされた服、バッグの中を漁る。
身分証明は簡単に見つかり、同じ大学の生徒だということがわかった。
とはいっても、学部は違うし、なんなら通ってる場所も違う。
遭遇点が見つからなかった。
合コンなんて参加しないし、コンペにもいかない。多人数が集まる場所にも顔を出してない。
そうなってくると、もう一人の自分というのを考えなければならなくなってくる。
記憶がないときはあった。
眠ってるような感覚で、何時間もの記憶が抜け落ちてるということがある。
知らない場所で起きることもあった(大抵はどこかのホテル。そして全裸の女性)。
これで男が隣に寝てたら、絶叫ものなのに、いつも女性がいる。そこはよかったことかもしれない。意識があるときに襲われでもしたら、私は立ち直れないショックを受けてただろう。いや……もう一人の自分がやってしまってるのだとしたら、私本体はそういうことをやってるということになる。
もうそれは襲われたのと何も違わない。
ーー数分後。
眠ってた女性を起こして、事情聴取。
今回はそういうプレイなのかと、なぜか疑われた。
真面目そうなのはちょっとおかしいと笑われた。
今後なにかあったときに相談にのってくれるとのことで、アドレスを交換した。
あとあとになって考えてみると、はじめての友だちと呼べる存在ができてた。
ーーさらにその後。
もしかしたら、もしかするかもしれないと、妊娠検査薬を試したところ。
妊娠してることが発覚した。
思わず、『はっ?』という怨念に満ちた声が漏れた。
いったい誰の子だろうか。記憶には当然ない。
記憶がない後に、目覚めたときに男はいなかった。いつも女性……それは間違いない。
だとすると、これは女性の子を身籠ったということなのだろうか。
確かに、女性同士、男同士の結婚。そして妊娠というのは科学の進歩によってうまれてる(男性の場合、人工子宮での妊娠)。
だがそれは、特殊な器械を使用することによって、誕生してるのであって、普通であればそんなことは起こり得ないのだ。
つまり誰かが、私の身体にそういったことをしたということになる。
いったいなぜ? そして誰が?
悩んでる時間はない。
知らない人の子どもを産む気はない。
そうして、実行するべきと、病院へと向かった。
もう一人の自分という可能性 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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