第11話
元の世界に戻ってから数年後――。
俺は元の世界に戻ってから、もう一うの人格のマオのアドバイスを元にSNSを使って自作の服を宣伝したり、美容のために色々努力した。その結果、引きこもりを脱却して今では女装ファッションデザイナーとして徐々に人気を上げていった。
今日もあの芋の世界に行った記憶を思い出す。あんなに鮮烈で強烈で意味不明な出来事を忘れる訳ない。昨日の事のように毎日思い出す。
「――はぁ」
『なに、溜め息ついてるの? これから次の仕事でしょ。シャッキっとしなさい』
「分かってるよ、マオ。着いたらよろしくね」
『わかってるわ。記憶力なら私に任せなさい。そんでもってリュージンは寝てなさい私が代わりにやってあげるからさ』
「いつも、ありがとう」
あの日からずっと俺のパートナーとして俺の中にいるもう一人の俺、『マオ』。この世界では俺が寝るとマオが前に出るようになっている。でも、今はマオだけがパートナーじゃない。
「どうしたんですか? 魔王龍神さん。またマオちゃんと話してたんですか?」
運転手が声を掛けてきた。
「んー、芋の世界に行った時の事を思い出して少しこれからの仕事を前向き向き合おうと思ってたところなんですよ、ウサギちゃん」
「あはは、その名前で呼ばないでくださいよ。私はあの世界で貴方と関わったのは最後だけですし。本当は名乗り上げる事さえしないつもりでしたんですよ」
「へぇ、それは初知り。どうして名乗り出てくれたの?」
ニマニマとした表情で俺は運転するウサギちゃんに言い寄る。
「貴方と同じです。あのクソ世界の出来事が鮮烈で猛烈で忘れられないし、その出来事を共有できる人がいるとなったらしたいじゃないですか。この世界では私たちしかあのクソな世界のこと知る人がいないんですし」
「正確には二人半だけどね」
「そうですね。マオちゃんもいますしね」
マオは頭の中で『そうだ、そうだ』と叫んで同意している。
「仕事場までさっさと行こう、ウサギちゃん!」
「はいはい、今向かってる最中なので少しでも休んでてください。マオちゃんもですよ。精神が休まっても身体が休まらないとぶっ倒れてしまいますからね?」
「分かってるわよ――だそうです。では、俺は寝ます。ウサギちゃん、着いたら、マオをよろしくお願いしますね」
「りょーかいしました」
あの芋の世界での出来事が無ければ俺は変われなかったが、別にあんな混沌したヤバい世界に行かなくても多分、形は違えどこんな感じになっていたんじゃないかなと俺は思った。
俺が異世界転移した話を少ししようか? 猫神流兎 @ryuujinmaou
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