元来、一部研究家の間では羅生門の羅はチュパカブラのラと言われてきた。なのでチュパカブラの登場にはさして不自然たる様子もなく、時に文豪芥川龍之介も一度はよぎったアイデアとされている。しかしながら現にチュパカブラを用いられなかったのにはいくらか理由がある。その一つとして『羅生門』12年後に書かれる『河童』がある。人間社会の対として描かれる河童社会の価値観によってより一層人間的価値から乖離するというような皮肉めいた作品であるが、芥川が河童を描くために羅生門でのチュパカブラを控えたと言われている。チュパカブラ、チュパカ、カッパ、河童。
ともあれチュパカブラを換骨奪胎した結果、羅生門は仄めかしの作品に仕上がり、多くの物議を醸したのである。
尾八原氏は敢えてこの領域に踏み込み、羅生門にチュパカブラを召喚する。続きを書く、あり得たはずの羅生門という意味ではこれは羅生門の完成と言って憚らない。