第43話 パンプキンゴーストのおかげで



 ひょこひょこと橙のカボチャが揺れる。幼児ほどの背丈の身体が跳ねて、宿舎の受付へと顔を覗かせた。パンプキンゴーストは今日ものんびりと過ごしている。受付にいるアリーチェの隣で彼女の手伝いをしていた。


 基本的に昼間は大人しくしているが、夕方になるとパンプキンゴーストは動き出す。アリーチェの足元にいたり、受付のテーブルに座っていたり、食堂がわりにしているホールを彷徨いたりと自由気侭だ。



「あら、今日はアリーチェの手伝いをしているのね」



 パンプキンゴーストがアリーチェに渡された紙を束ねている所にツバキは声をかけた。パンプキンゴーストは顔を上げて立ち上がる。



「パンプキンちゃん、こうやって手伝ってくれるんで助かってるんですよぉ」


「夜中は洗濯場で一人遊んでるみたいだけど」

「そうなんですよね。悪いことはしてないのでそのままにしてるんですけど」



 ゴーストなんで夜が活動時間だから仕方ないのかなとアリーチェは言う。悪さもしていないのに無理して止めるのも可哀相だと。それはそうだなとツバキパンプキンゴーストを見た。


 パンプキンゴーストはじぃっとツバキを見つめている。それが不思議で首を傾げると、彼はなんだか嬉しそうにひょこっと跳ねた。



「どうしたのかしら?」

「うーんと、多分ですけど、ツバキさんが元気だからじゃないですかね?」



 アリーチェにそう言われてツバキはあの夜のことを思い出す。パンプキンゴーストがイザークを連れてきたことを。急に泣き出したのを見てきっと驚いただろうなと思いながらツバキは「大丈夫よ」と笑みを見せた。



「貴方のおかげで気づくこともできて、元気でいられるわ」



 ツバキの言葉を理解してか、パンプキンゴーストはまた嬉しそうにひょこひょこと跳ねた。



「なんだか思うんですよねぇ」

「何かしら?」

「イザークさんとツバキさんですよ。出会いから恋人になるまでの流れがなんというか、凄いというか」



 助けたのをきっかけに相手を知っていき、惹かれ合っていく。それを身近で見れると言うのはそうないとアリーチェは言う。



「レオナルドさんとレイチェルさんもですけど、なんというか運命ってあるのかなぁて思っちゃいますね」


「運命があるのかはわからないけれど、少し信じてみたくなるわ。レオナルドさんとレイチェルさんはまだ付き合ってないとは思うけれど、もう恋人みたいなものよねぇ」



 うんうんと二人は頷き合う、あの二人はもう恋人だろうと。そんな二人の様子にパンプキンゴーストはよくわかっていないのか首を傾げていた。



「ツバキ、どうした?」



 声をかけられて振り向けば、イザークがレオナルドとレイチェルを連れてやってきた。そろそろ夕食をとろうと思ったらしい。ツバキがいないので降りてきたようだ。


 ツバキは「なんでもないのよ」と笑みを浮かべる。



「レオナルドさんとレイチェルさんはお似合いよねって話をしていたの」

「お似合いですよー」

「いや、どうしてそういう話に……」

「当然じゃないですかぁ〜! ワタシはレオナルド様に相応しい乙女ですわ!」

「レイチェル、ちょっと静かに」



 にこにこと抱きついてくるレイチェルにレオナルドは突っ込む。動揺しているす様子にアリーチェはニヤニヤとしていた。


 イザークも二人は相性が良いと思っているようで、「いいと思うが?」と言っている。レオナルドはそれになんとも言えない表情を見せる。



「恋人は悪いものじゃないが?」

「お前からそれ聞くとは思わなかったよ」

「言った俺も驚いている」

「イザークみたいにツバキさんにデレデレにはならないからな?」

「甘えてくださっていいんですのよ、レオナルド様〜!」



 腕に抱きつくレイチェルに突っ込むレオナルドに、とは言いつつもちゃんと手を繋いであげてるよなぁとツバキはその様子を眺める。それはアリーチェも同じことを思っているのか、小さく指差しながらツバキの方を見ていた。


 くすりとアリーチェと笑い合うとパンプキンゴーストがひょこっとツバキの足元から顔を覗かせる。



「あぁ、そうだったわ。貴方にも感謝しなくちゃね、ありがとう」



 ツバキがそう言ってパンプキンゴーストのカボチャを撫でる。すると、パンプキンゴーストは嬉しそうに飛び跳ねた。



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ベストパートナーは最強元騎士様!?〜竜の瞳を持つ殿方を助けたら懐かれてしまいましたがこの方、(愛も力も)強すぎます〜 巴 雪夜 @tomoe_yuya

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