人生を圧迫する張本人は一体誰なのか?

生きづらい世の中です。露骨なものにしろ小さなものにしろ、悪意は泡のようにぷかぷか浮かんでいます。それに捕らわれてしまった時、一人の人間に一体何ができるのか。その葛藤が見事に描き切られています。

僕はいじめに遭ったことはありませんが、それは周囲に恵まれていただけなのだな、と痛いほど思い知りました。
そう僕に思わせるほどの経験をなさってきた著者様の経験が、胸を打ちます。

しかしそれは、内容が重くなりすぎないように見事にバランス調整がなされた結果である、とも言えます。重すぎる表現は(文章でも映像でも)、時に受け手の理解を妨げます。

その心配が、このエッセイにはありません。それでいて明確に事実を描いているのですから、真摯にご自分の過去に向き合われようとする著者様のお気持ちが伝わってきます。

とても繊細ながら芯の通った、『強いエッセイ』です。

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