『君が彼を愛しているからだ、友よ』などとイケメンな台詞でヒロインの背中を押すダンディなモブは、なんとガチョウ?!
真っ黒なスチールのストーブの上、大鍋いっぱいのコケモモのジャムをかき混ぜていそうな森の魔女、もとい薬草医の元に、足取り軽く訪れる王子。
これだけでワクワクする出だしだけれど、うさんくさい魔女に絡まれたり、賢い女性の会に勧誘されたり、王子に誘惑されたりしているうちに、大きな陰謀に巻き込まれて……
伝統的なファンタジーでありつつ、派手なアクション、ハートウォームなラブに驚きの黒幕まで。
本好きが愛するネタがぎゅぎゅっと詰め込まれた、大満足の作品です。
まず、グリム童話が好きな人、日常系ファンタジーが好きな人、可愛いペットが好きな人には、ぜひ読んでもらいたい。
と言えば、なんとなくふんいき伝わるでしょうか?
そう! そんな感じ。
ほのぼのした世界で起こる、あれこれの事件をとにかく魔女と間違われる薬草医のスーリと、コミュ力強すぎる王子様が解決していく連作短編集。
あっ、でもね。ほのぼのだけでもなさそうなんですよね。この二人は何やらとんでもない秘密をかかえてそう。
そこらへんも楽しみな今後の展開。二人のじれじれな恋はどうなるのか?
あとですね。この作者さまはたいへん文章力高いんですよ。とくに語彙力は天下一品ですので、そんな作者さまが、あえてコミカルに描く文体を、ときにクスクス笑いつつ、ぜひぜひ堪能してもらいたい。
またまた楽しみなシリーズが一つ増えました。