8、櫻ノ丘

 新しい丘へ、向かう。そこまでの道のりは、あまり整備されていなく、でも

ハイキングコースを歩いているみたいで、楽しかった。

「わっ!!いやっ!!」

「どしたの?あ、トカゲ」

そう言うと、僕はそこにいたトカゲを手に乗せた。

「キモイ!!触れるの?!」

「触れるよ。カワイイじゃん」

「え・・・そお?ぜんぜ・・・ギャー!!こっちに近づけないで!」

「はいはい。かわいいのにね~。よし、決めた!!この子を、飼う!!」

「飼うの?!飼えるの?!」

「飼えるさ。名前は・・・カナロ!!」

「カナロ?どっから来たの?」

「コタローに当てはめると、カナロウ⇒カナロー⇒カナロってわけ」

「へぇ」

「ポシェットに入っててね。あ、入った。いーこいーこ」

「いい子なのかな・・・」

「それより、行こうよ?」

しばらく登ると、ついた。

「え?ここ?何もないよ?」

カナロは、ポシェットの中を歩き回っている。殺風景に混乱しているようだ。

「ここには何もないよ」

「うん」

「でも、もうすぐ見れるよ」

「何が?」

「秋の桜だよ!さっき言ってたじゃん!!」

「そっか」

ったく。そこ忘れるか?

「それじゃあ、下りよう」

「下りるの?」

「下りるって言ってもまだ丘の中だよ」

「ふぅん」

それから、その言葉に従って下りていくと―—―


 一面に、コスモスが広がっていた。

「ここがこの丘のコスモス畑!!あまり知られてないけど」

「そうなんだ!!キレイだなぁ」

あ、カナロが。ポシェットから出て、そこらを走り回ってる。

「カナロー、待って~!!」

と、カナロを追いかける僕の肩を凛ちゃんに叩かれた。

「何?」

「ちょっと伝えたいことがあるんだ―—―」

というわけで、カナロには、マフラーの糸をつけて、遊ばせておくことにした。

「ねえねえ・・・」

「なぁに?」

伝えるんだ。今伝えるのは、すごく緊張する。コタロー君が受け入れるかな?

「私がコタロー君を知ったのは、まだ女子高にいる時。Boy&Girl love・mixで

コタロー君を知ったの。それで、すごい魅かれたから、わざわざ引っ越してきた」

「へえ」

そこまでする?恋人がいるから引っ越したってロマンチック。

「それで、ここ来たんだよね。それで、初めてコタロー君と会ったのが校門で

ぶつかりかけたとき。その次の日に、コタロー君と横になるという。車いすに

乗ってるなんて、聞いてないからさ」

「ふん。でも、あんまりBoy&Girl love・mixいじってないからさ」

「いじれよ、そこ」

「ハハハ」

本当に会話が弾んでいる。僕の心の弾みは、尋常じゃない。

「コタロー君って、ドジで料理音痴で、カッコつけな子。だけど、すごくいい子

だね。私は、そんなに魅かれた」

ああ、ついにここまで行ったか。私は、ここまでやり切ったんだ。でも、

ここからだ。小太郎君は、真顔でいる。全く感情が読み取れない。受け入れて

くれるかな?それとも?あああ、早く言ってよ。

「・・・・・」

あ、私からか。

「だから、私と・・・付き合ってくれませんかぁぁ・・・」

どうしよう?僕は、恋愛経験がないから、凛ちゃんを泣かせないかな?こんな告白も

初めて受けた。彼女は、まだ何も言ってないのに、1滴の涙をスカートに落とした。

「・・・・・・・」

これは、絶対にフリだ。私は、これまでたくさんの恋愛を経験したけど、こんなに

ドキドキするのは、初めてだ。

「い・・・」

言えない。なかなか返事ができない。でも、確かに泣かせるかも。でも、今

フッたほうが、彼女が泣く。

「いいよ」

「あ・・・ああ・・・アアーン!!」

本気で泣いちゃった。こんなに嬉しいんだね。真の恋愛っていうのは。

「それじゃあ、遊ぼっ!!」

何も知らないカナロがコチラに駆けてくる。

「よしよし、カナロ」

ちょっとカナロがかわいく思えてくる。

「ねえ、この丘の名前はなんていうの?」

「櫻ノ丘」

「いいじゃん。僕らのこれは・・・」

「この花は私たちの・・・」

カナロは、頭を突き出している。何かを話したそう。

「『最高で、特別な秋桜コスモスだからね』」


終わり

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秋桜で深まる恋心 DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555

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