異世界アーサー王の噂

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異世界アーサー王の噂

王は気性が荒い、と誰かが言った。


ガヤガヤと賑やかだった食堂が一瞬ヒヤッとした空気に包まれ、発言した者が叩かれたのか「いてっ!」という声がどこからか聞こえた。

まるでこの場にいない誰かに怯えるような空気に新米騎士は首を傾げた。


「皆さんどうしたのですか?」

「お前、新米……いや、食堂で働いてる奴だな?手が綺麗だからすぐ分かった」

「し、新米騎士です!食堂はお手伝いしていただけで、騎士が本職です!」


近くに座っていた中年の騎士は新米騎士の疑問に答えようとしてくれたようだった。

中年騎士がヒソヒソと声を小さくして周りに聞こえないように話し始めた。


「まあ誰かが言ってたように気性が荒いって言われちまうのもしゃあねぇさ。

俺らの王様は可愛い顔の割にバケモンの神様相手でも引かねぇ、むしろバンバン倒しに行く。

それに快活な方だ。別にあの御方が聞いてたってこのくらいの噂なら気にもしねぇよ」


「じゃ、じゃあ誰に聞かれてはいけないのですか?」


新米騎士の慌てた様子に中年騎士は少し笑って語った。


「王とご兄弟のケイ卿と、太陽神様だな」

「え、太陽神様!??」


兄弟のケイ卿はまだしも、太陽神と言えばこの世界を創り出して恐ろしい神々から我々を守ってくださっている尊きお方だ。そんなお方の話が何故!?

と、新米騎士がパニックになった。


「何故そこで太陽神様が出るのですか!?」

「落ち着け落ち着け。王は太陽神様から加護を授かっている。尚更聞かせられないようなことは言うなってことだ」


なるほど、と新米騎士はホッと息をついて昼食を取り始めた。

大量の料理が次々に綺麗な顔に吸い込まれていく様に中年騎士は「すっげぇ見覚えのある食いっぷりだな」と考える。


「お前、そういえば名前は?」

「僕はガレスです!」

「そうか。俺はマーリン」

「へぇ、魔法使い様と同じ名前なのですね」

「ハハ!んなわけあるかよ。正真正銘の魔法使いマーリンだ、俺は」


なんと、魔法使いマーリン様が騎士の格好を…格好を………なんで?

ガレスはまたもや首を傾げてひそひそと中年騎士、もといマーリンに聞いた。


「何故騎士の格好をしているのですか?」

「俺だってバレずに飯を食うためさ。騎士達の中に魔法使いが混ざって食べてると皆気を使うだろ?」

「ここで話している時点でもうバレているのではないですか?」

「違いない」


中年騎士の姿をしたマーリンは小さく笑うと食べ終わった皿の片付けをし始めた。


「じゃあね、俺は行くから。先輩のためになる話はお終いだ」

「はい、ありがとうございました」


マーリンは片手で器用に積み重ねた皿を持ちながらヒラヒラと後ろに手を振った。

ガレスはその後ろ姿に軽くお辞儀をしてまた食事に取り掛かった。

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