保育園が休みになって、ずっと家にいる幼い娘が、タブレットの動画サイトで毎日飽きることなくお経を聴いている。あまりそのことを気にしていなかった母親だが、その動画には思わぬ秘密が……。「現代」を舞台にした、日常の綻びを描いたホラー短編。当たり前に普及しているものだからこそ、リアルに想像できてしまいます。ずっと恐ろしくも、ちょっと切なさも感じさせます。引き込ませて引き込ませて、いつまでも捕らえられてしまうような、尾を引く怖さがありました。
『きょうを読むひと』というタイトルにする、という企画に参加している書き下ろし作品で、はじめ「経を読む人」というスタンダードな解釈が取られているのですが、そこからの話の展開がものすごい。想像を絶する作品でした。お題を受けての、そこからの話の広げ方、解釈の展開の仕方が、ほんとうにうまいです。感服しました。